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これだけでもかなり距離は近いし、傍目から見ると抱き合っているようにも見える。接している場所はお互いの両手とそれを置いた場所だけなのだけど。
「では次にボディコンタクトを取ってみます。お二人の右のお腹のあたりをくっつけてください」
今までは不自然にぽっかりと空いていたこの距離を埋める。一歩踏み出すだけだけど緊張する。
私が戸惑ううちにレインが一歩前に出て、私のお腹に熱が広がった。
こんなに広範囲をくっつけるのは初めてじゃないだろうか。誘拐事件の時に庇うために抱きしめる咄嗟の出来事はあったけど、自分の意志では初めてだ。
「三十秒数えますね」
目が合うと心臓が飛び出てしまいそうなので私はじっと下を見た。レインはどんな表情をしているんだろう。見てみたい気もするけれど見てしまったら本当に私の心臓は壊れてしまう気がしたから、そのままじっと三十秒たつのを待った。
お腹がじっとりと熱を持ち、それが全身を駆け巡る。レインの手を取った右手は汗ばんでいないか気になるし、レインの右腕に添わせた左手はぷるぷる震えてしまっている。
「はい、三十秒たちました」
「はあっ、」
息を大きく吐いたのは私だ。気づかぬうちに息を止めてしまっていたらしい。
「あはは、セレン。私より緊張しているね。真っ赤だ」
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