21 触れる五分と触れられない三時間

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21 触れる五分と触れられない三時間

  「とてもお似合いです、奥様!」  本日二度目のスキンシップ治療「ボディコンタクトを一分」を終えた後、私はドレスに着替えていた。ちょうどパーティーに着ていくドレスが届いたのだ。 「セレン、本当にきれいだね」  と部屋に入ってきたレインがニコニコと私を見るから、その場にいるデザイナーやメイドもニコニコと私たちを見守っている。は、恥ずかしい。  でも、薄い水色のドレスは本当に綺麗だ。肌に直接触れないように肩や腕を七分丈の総レースで覆っている。広がりすぎないチュールを合わせたスレンダーなドレスだ。肌にレースの刺繍が浮き上がって透明感があって小ぶりな水色のアクセサリーも合わせると上品な印象になる。レインはドレスを選ぶセンスもいいらしい。 「素敵なドレスをありがとう」 「今まで私はセレンに何も贈れていなかったからね」 「たくさん論文や書籍は持ち帰ってくれたわ」 「それは……そうだけど、恋人に贈るものとしては……」  張り切って恋人をしてくれているレインが可愛らしくて笑みがこぼれてしまう。このところ以前よりずっと自然に笑顔になれている気がする。といっても、他の人に比べたら固い表情なのだけど。 「奥様、こちらも届いていましたよ」  声をかけてくれたメイドが箱を開くと、白いハンカチが入っていた。贈り主は、エスト・フリエル。所長からだ。
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