21 触れる五分と触れられない三時間

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 以前相談していた試作品が出来上がったらしい!魔力を跳ね返す鎧の簡易版とはいえ、こんな風に薄い布でも作ってみせるところはさすが所長だ。隣で覗き込むレインに簡単に説明する。 「鎧ほどの効力はもちろんないけど、貴方のアレルギー対策にはなるはずだわ。ドレスのお腹の部分にこの布を縫い付けてもらいましょう」 「うん、そうだね」  素晴らしいアイテムが届いたと思ったけどレインは浮かない顔をしている。 「どうしたの?」 「大好きな奥さんと少しだけ身体を合わせるだけなのに、魔法具の力を借りないといけないなんて」 「だ……」  ストレートな言葉に顔が熱くなるのがわかるけど、私の顔を見てレインは少しだけ口角を上げた。 「こうやって照れてくれるなら今はそれでいいか」 「レイン……」  小さな声で抗議するけれど、ニコニコと嬉しそうなレインに勝てるはずもない。 「今回は保険としてドレスに縫い付けてもらうけど、私はセレンに触れるようになりたいから。今日この後も治療は手伝ってくれる?」 「うん」  顔を見るのが恥ずかしくてそう答えるのがやっとだった。
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