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「うん、セレンのおかげでね。こんな体質は呪いとしか思えなかったし、弱い自分が嫌いで仕方なかった。でもセレンといると少しは肯定的に捉えられるよ、ありがとう」
私は照れから少しからかうような口調になってしまったのに。レインは真面目にそう返してくれるから、私はますます泣きたくなった。
「あ、五分だ」
そしてレインは名残惜しそうに私から離れる。「早いな、残念」
最後に、繋いでいた手も離れた。あれだけ恥ずかしくて逃げ出したくなったのに、熱が一つもなくなると途端に寂しくなる。
「夕食までまだ時間があるね。ここにいてくれる?」
「ええ」
レインは近くのソファに腰かけると、隣に座るように促した。
隣に座って彼の方を見る。――もっと触れたい。単純な欲求が出てくる。ただ同じ部屋で過ごすだけで心は満ちていたのに、隣に座る彼の肩に触れたくなる。寂しくもないし、不安でもないのに、それでもこんなに触れたくなるなんて知らなかった。
でも、ダメだ。スキンシップ治療の反応待機時間は以前クリアしたスキンシップ内容も全て含めて接触を禁止している。何か症状が出た時にどの接触が問題だったかわからなくなるからだ。
「セレン」
声をかけられてじっと見つめてしまっていたことに気づく。
「そんな顔をされると触れたくなるよ」
レインは困ったような顔で笑った。
「あ、ごめんなさい……」
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