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22 凍えた喉の温め方
「よくいらっしゃいました。自分の家だと思ってゆっくりお過ごしくださいね」
出迎えてくれたのは妖艶に微笑むのはアナベル様。皆が魅了されるのもわかる、少女とは違う大人の女性の深い美しさがある。
以前ご挨拶した時はただ美しい人だと思っていただけれど、事情を知ってから目の前に立つとお腹が冷えるような感覚が襲う。
ついに決戦のパーティーの日がやってきて、私たちは王都から一時間程離れたリスター家に来ていた。
「お招きいただきありがとうございます。二日間よろしくお願いいたします」
カーティスに微笑まない方がマシだと言われたので笑顔は封印して、真面目に見えるように丁寧に礼をした。
「疲れているからパーティーまで部屋で休ませて欲しい」
レインは開口一番そう言った。
「レイン、久しぶりなのだから母とのお茶に付き合ってくれない?」
「いえ、妻を一人にはできませんから」
「そうね、それなら明日はどうかしら?アメリアがお姉様が出来たと喜んでいたから。セレンさん、明日ぜひアメリアと過ごしてあげて」
「それでは部屋に向かいます、また夜に」
アナベル様の提案には返事をせずレインは館に向かっていく。私とカーティスが彼の後ろを追うと
「女性はエスコートしてあげなくちゃだめよ」
と甘い声が後ろから聞こえた。その声から逃げるようにレインは足を早めた。
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