22 凍えた喉の温め方

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 館に入り彼女の影が消えるとレインは息を吐いた。レインの顔は真っ青だ。  並んでいる使用人たちが「おかえりなさいませ」と私たちの荷物を受け取る。そして「こちらです」と歩き出す、滞在する部屋に案内してくれるようだ。  王都のリスター家の使用人とは雰囲気が違う。丁寧で完璧な対応だけれどレインを見る目は冷ややかだ。  数名の使用人の後をついていくと、彼らは二階の一室の前で歩みを止めた。 「滞在中はこちらの部屋をお使いください」  開かれた扉の前で笑顔を向けてくる使用人に少し戸惑う。まさか……。 「すみません、こちらはレイン様のお部屋でよろしいでしょうか?セレン様のお部屋は?」  カーティスが横から出てきて、使用人に尋ねる。 「いえ、ご夫婦で使用される部屋でございます」 「ゆっくり過ごせるようにそれぞれの部屋を用意するよう頼んだはずですが?」 「新婚さんですもの、同じ部屋にしてあげないとかわいそうでしょう?」  くぐもった甘い声が後ろから聞こえてくる。そして、甘い匂いがその場に立ち込める。 「かわいい息子夫婦のためですもの。かわいい孫が出来るかもしれないわね。まさか一度も同じベッドで眠ったことがないだなんてことはないわよね?」  振り向くと微笑むアナベル様がいる。隣のレインを見るとこんなに涼しいのに汗がにじんでいる。 「ご配慮ありがとうございます。行きましょうレイン」
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