22 凍えた喉の温め方

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 ここで話していても無駄だ。私はアナベル様の目を見て伝えると、レインの手をしっかり握った。彼の手は汗ばんでいるのに酷く冷たい。  アナベル様の目線が私たちの手元に移動するのがわかる。私は凍えるレインの手をもう一度ぎゅっと握り、アナベル様に軽く礼をすると部屋に進んだ。 「夜また会えるのを楽しみにしているわ」  アナベル様の声が追いかけるように聞こえた。私は聞こえないことにして進む。早くレインをあの人の目の届かない場所に連れていきたい。  扉を閉めた音が聞こえてようやく振り向くと、使用人たちから全ての荷物を受け取ったらしいカーティスの姿が目に入る。あの冷ややかな目の人たちをこの場に入れたくなかったから、カーティスの心遣いがありがたい。 「レイン、ここに座って」 「ありがとう」  部屋の真ん中に置いてある小さなテーブルにレインは座った。  客人をもてなすために用意された素敵な部屋だ。調度品はどれも見るからに高級品だし、窓は大きく光はたくさん差し込んで明るい。それなのにどこか冷たい部屋だった。  旅行の夜にレインが怯えてしまったベッドよりも一回り小さいダブルベッドが置いてあり、ソファなどはない。 「私はお茶の用意をしてきます」  荷物をおろしたカーティスはそう言って出て行った。部屋には沈黙が訪れる。  レインは座ったまま下をうつむいている。私は彼の目の前に屈んだ。
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