22 凍えた喉の温め方

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 結婚式の日もアナベル様には会ったはずだけれど、私の前では気丈に振舞ってくれていたのだろうか。こんな素振りはなかった。それともこの館が彼にとって恐ろしい場所なのだろうか。どちらもかもしれない。 「レイン、手に触れてもいいかしら」 「うん、ありがとう」  レインの両手をそっと私の両手と繋いでみる。下から彼を見上げるとうつむいた瞳と目が合った。 「ごめんね、セレン。……本当に自分が嫌になるよ」 「ううん、大丈夫よ。大丈夫だから」  項垂れた頭ごと抱きしめてあげたい。冷たい手をそっと握り続ける。  しばらくそうしているとノックと共にカーティスが入ってきた。立ち上がろうとしたがレインはぎゅっと手を掴んだまま離さないからそのままの体勢でいることにする。  カーティスも何も言わずに私たちの近くにお茶を用意していく。 「ありがとうカーティス」 「いえセレン様。こちらこそありがとうございます。では私は自分の部屋におりますので何かありましたらいつものように」  そしてお茶の用意が終わればすぐにカーティスは出て行った。 「レイン、お茶を飲まない?」 「うん、ありがとう」  固くこわばっていた手のひらに少し赤味が戻ってきている。少しだけホッとして私も椅子に座った。レインもようやく顔を上げてカップを手に取った。琥珀色が揺れる、レインの一番好きなお茶の香りがする。
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