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「だいぶ落ち着いた、ありがとう」
レインはようやく笑顔を見せてくれた。少しぎこちなさはあるけれど顔色もずいぶんよくなった。
「どうもこの館が苦手で……領主なのに自分の領地と家が苦手だなんてありえないだろう。セオドアやアメリアに任せてばかりなんだ」
そしてもう一度目を伏せて、カップの中に生まれる波を見つめている。
「レイン」
名前を呼ぶと不安そうな瞳がこちらを見た。
呼びかけてみたけれど何を言えば彼の気持ちが安らぐのかわからない。
「無理しないで……こんなことしか言えなくてごめんなさい」
素直な気持ちを吐露するとレインは小さく笑ってくれた。
「気を遣わせてしまったね」
「そんなことないわ。解決できることはゆっくりでいいし、できないものは無理はしなくてもいいのよ」
「ありがとう。セレン、ごめん。もう一度手を繋いでくれる?」
「ええ」
レインは立ち上がると私の椅子の前まで来て、両手を繋ぎ合わせた。
やっぱりぎゅっと抱きしめてあげたくなる。この館で苦しんだ十五歳のレインごと。
「カーティスにも部屋は用意されているのでしょう?私がそちらに泊まるのはどうかしら?」
ひとまず落ち着いたけれど夜のことも考えねばならなかった。この館で女性と二人で過ごすだなんてレインにとっては恐ろしいことでしかない。
「ううん、いいよ。このまま二人で」
「でも……」
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