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「おはよう、セレン」
朝食の席。案内された部屋に到着すると、にこやかに出迎えてくれたのはレイン・リスター侯爵。
白髪で雪のように白い肌、涼やかなアイスブルーの瞳。童話の中から飛び出したような容姿の彼は、通称スノープリンス。
元・壁の花仲間であり、昨日からは夫になった人で、初夜を別部屋で過ごそうと提案した人である。
「おはよう、レイン」
挨拶を返して、向かい合わせの席に座る。席にはパンやフルーツ等が並んでいて、ちょっといいホテルのモーニングのようなメニューだ。
「昨日はよく眠れた?」
レインは優しく声をかけてくるけれど、これは決して嫌味ではない。
私たちの中で、初夜を共に過ごさないことは婚約前から決まっていたことだったから。
妻に対して、というよりも新しい同居人に投げかける言葉だったのだから。
私たちは利害が一致した、だから結婚した、それだけ。
レインは婚約前に言ったのだ。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」と。
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