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12 セレン・フォーウッド
「くしゅんっ」
自分のくしゃみで目を覚ました。……やけに埃っぽい場所だ。そうだ、資料室にいたんだっけ。掃除しないといけないと思っていたんだ。
ううん、資料室じゃない。しっかり目を開けるとそこは知らない場所だ。
物置だろうか。小さめの部屋には大きな棚が両面にあり、物が無造作に置かれている。
そして、手首が痛い。ロープでぐるぐる巻きにされている。足首も同様だ。しかし一人用の小さなソファに座らされているからお尻は痛くなかった。服装は仕事中の白衣のままで、ゴソゴソ身を捩って自分の身体を触ってみる。怪我はしていなさそうだ。
部屋は暗いが、私の身長よりも高い場所にある小窓から月明かりが漏れてくる。どうやらまだ夜らしい。
そして目の前の扉が開き、痩せた眼鏡の男が入ってきた。――そうだ、私をここに連れてきたのは副所長だ。
「ああ、目覚めたんだね」
彼が手に持ったランプが私を照らす。光に照らされた眼鏡が不気味に反射する。
「どうして……」
まさかリスター家と副所長に繋がりがあったとは思わなかった。レインの母に頼まれたのだろうか。
「どうしてってそれは僕のセリフだよ。セレン・フォーウッドがセレン・リスターになるだなんて許されないんだよ」
私がリスター家には似合わないのだと言いたいらしい。
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