12 セレン・フォーウッド

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 副所長は私の前に屈んで、私の首に手を伸ばす。汗ばんだ指が首筋をなぞる、嫌悪感がこみ上げる。 「ああごめんね、セレンたんの美しい肌が傷ついてしまった。でも大丈夫、ここから逃げた後に回復してあげるね」 「……どこに連れて行くんですか」 「どこにしようか?セレンたんはどこがいい?ベストエンドと同じくフォーウッド領の近くがいいとは思うんだけど見つかってしまいそうだよね。二人きりでいられるように誰も僕たちを知らない他国まで行こうと思ってるんだけどどうかな?」  熱に浮かされたように副所長は言うと、私の手を握った。ネットリとした指が絡みつく。……気持ち悪い。レインと手を繋ぐと胸が満たされたのに、今は身体が冷えて吐き気すらする。触られたくない人に触られる気味悪さを知る。 「……リスター家に頼まれたのではないのですか?」 「リスター家?何のことかわからないけど、セレンたんの名前が他の名前になるのは許せないよ!セレンたんはセレン・フォーウッドなんだ!」  どうやらこの行為はリスター家とは関係がなく、彼の意思で行われたことのようだ。 「セレンたんが主人公と結ばれるなら諦めるよ、だって僕はモブだからね。でも同じくモブの男と結婚するだなんて、それは絶対に許されないだろう……!」 「待ってください、何を言って――」  まさか、もしかして、 「私のことを、私と出会う前から知ってるんですか」
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