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「推しはセレンたんだけど、シナリオはリリーエンドが一番好きだから最高だよ。リリーたんはメインヒロインで幼なじみポジなんだ。残念だったねセレンたん、主人公と結ばれなくて」
そう言われても、リリーの夫になった人は幼き頃からリリーの許嫁で。私は家族同士のお茶会にもほとんど参加しなかったから、会話をしたこともない。リリーの許嫁、という印象しかない。
「彼をそんな風に見たことはありません」
「それなのに、どうしてっ!」
機嫌よく語っていた副所長が突然激昂した。私の肩を掴んでゆさぶる。
「どうして、君は!ゲームにも登場しない、ただのモブの男と結婚しているんだ!!!君はセレン・フォーウッドというキャラクターだろう!?セレン・リスターだなんて許されない!!!」
「キャラクターじゃないわ」
私は生きてる、二十年間の記憶と積み重ねがある。副所長の都合のいいキャラクターではない。
「僕だってこんなことするつもりはなかったんだよ、ずっと君のそばで君の上司として君のことを見守っていられたらいいんだ。主人公のように微笑まれなくてもいい。僕は君のその冷たい瞳を愛しているからね」
言い聞かせるように彼はつぶやき始める。
「それなのに、君は……!他の男と結婚して、僕の知らない表情であの男を見つめる!君には変わってほしくないんだ、いつまでも出会った頃のセレン・フォーウッドでいてもらわないと」
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