233人が本棚に入れています
本棚に追加
荷台を私の前まで進めると、副所長は私に近寄り手足のロープに電気を放った。微力なものだが、手足は痺れて動かなくなる。そして私を……抱き上げた。
「はあ夢みたいだ、セレンたんを抱きしめられるなんて」
生暖かい息が私の顔にかかる。私は目を閉じて顔を背ける。
「ふふ、マスクしているとキスが出来ないのは残念だね。いつまでもこうやってお姫様抱っこしていたいんだけど、追手が来たら困るから後にしよう」
そして彼は私をあっさりと木箱の中にいれた。
「君が失踪したからと言ってすぐに僕に疑惑の目が向くことはないとは思うんだけど、職員全員に聞き取りがあるかもしれないからね。僕の家にも捜査が入るかも。まあここは僕の家ではないから、バレることもないんだけどね、ふふっ」
早口で彼は笑って、私の頭を撫でる。
「ごめんねセレンたん、少し居心地が悪いよね。それに蓋を閉めてしまうから暗いけど怖がらないでね、王都を離れたら出してあげるから」
彼の脂ぎった顔がランプで照らされている。そして、蓋は閉められて暗闇が訪れた。
最初のコメントを投稿しよう!