233人が本棚に入れています
本棚に追加
「すみません」
少し遠くから、涼やかな声が聞こえる。この声は。
「……どなたですか?」
「先日ご挨拶させていただいたセレンの夫のレイン・リスターですよ」「ああ、セレンさんのご主人ですか。どうされましたか?」
さらっとしたレインの声と、動揺を隠しきれていない副所長の声が聞こえる。
「妻を返して貰いに来たんですよ」
「仰っている意味がわかりませんね。申し訳ありませんが、今から予定がありまして」
「どちらにお出かけに?」
「貴方に言う必要がありますか?急いでいますので」
「必要ありますよ。私の妻がこちらにいると思うのですが」
「だから知りませんよ、何を勘違いされているのか……」
「いえ、ここにいるはずなんです」
レインは鋭い声で断言した。
木箱の隙間から、青い一筋の光が真っ直ぐ私に伸びてきた。それは私の白衣のポケットに繫がって行く。
「なんだこれは」
「私の妻は優秀でして。今開発中の商品らしいです。こうやって誘拐された時に使えるアイテムでして」
所長から預かった卵にGPSのような機能をつけられないか、と最近一人で試していたのがうまくいったのだ!片方の卵からもう片方まで光が導いてくれる設計にしてみたのだ。
成功に密かに喜びながら二人の会話をじっと聞いていると、木箱の蓋は開けられた。開けてくれたのは、カーティスだ……!
最初のコメントを投稿しよう!