13 魔法が運ぶ緊急事態

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「すみません」  少し遠くから、涼やかな声が聞こえる。この声は。 「……どなたですか?」 「先日ご挨拶させていただいたセレンの夫のレイン・リスターですよ」「ああ、セレンさんのご主人ですか。どうされましたか?」  さらっとしたレインの声と、動揺を隠しきれていない副所長の声が聞こえる。 「妻を返して貰いに来たんですよ」 「仰っている意味がわかりませんね。申し訳ありませんが、今から予定がありまして」 「どちらにお出かけに?」 「貴方に言う必要がありますか?急いでいますので」 「必要ありますよ。私の妻がこちらにいると思うのですが」 「だから知りませんよ、何を勘違いされているのか……」 「いえ、ここにいるはずなんです」  レインは鋭い声で断言した。  木箱の隙間から、青い一筋の光が真っ直ぐ私に伸びてきた。それは私の白衣のポケットに繫がって行く。 「なんだこれは」 「私の妻は優秀でして。今開発中の商品らしいです。こうやって誘拐された時に使えるアイテムでして」  所長から預かった卵にGPSのような機能をつけられないか、と最近一人で試していたのがうまくいったのだ!片方の卵からもう片方まで光が導いてくれる設計にしてみたのだ。  成功に密かに喜びながら二人の会話をじっと聞いていると、木箱の蓋は開けられた。開けてくれたのは、カーティスだ……!
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