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副所長がもう一度私に向かって手を伸ばすと、彼の手の動きに合わせて私の身体が一メートルほど宙に浮く。副所長が自分の方へ引っ張る仕草をすると、私の身体は強い風で彼の元に運ばれそうになる。暴風でカーティスも私の元には戻ってこれない。
私にだって魔力はある。逆方向に身体よ動け!と浮遊魔法を発動して彼の力と反発させるが、副所長の魔力のほうが強い。
「セレン!」
風が吹き荒れる中、なんとか私のもとまで来たレインが私に手を差し出した。――手袋も何もしていない。
「私のことは気にしなくていいから!手を取って!セレン!」
私の戸惑いに気づいたレインは叫んだ。
覚悟を決めて力を振り絞ってレインに近づき、右手でしっかりレインの手を取る。レインは私の右手を両手で掴み力を込めて引き寄せた。そしてそのまま私をしっかり抱きしめてくれたから、私の足はようやく地上に降り立つ。
「セレン、風を相手に押し返そう!」
副所長は必死な形相で綱引きをするように、私を手繰り寄せようとしている。私は副所長に手のひらを向けた。レインも同じボーズを取り、副所長に向けて二人で大きな風を吹かせた。
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