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14 抱きしめられなくても
息がようやく整ってきた。全速力で走ったのなんて子供の頃ぶり……いや、前世の子供の頃ぶりかもしれない。
リスター家の馬車は私たちの家に向かっている。
身体が落ち着いてくると、無性に落ち着かなくなる。副所長のぎらついた瞳やべったりした指の感触を思い出して。せっかく息は落ち着いたのに。
流れるようにいろんなことが起きて戸惑いがほとんどを占めていたけど、今になって身体が震えそうになる。
「セレン」
優しい声に導かれて隣を見るとレインが心配そうにこちらを見つめていた。
「……大丈夫よ」
そう答える私の声音はちっとも大丈夫そうではなかった。
「うん」
レインはそれしか言わず、私の右手に自分の左手を重ねた。重ねられて初めて手が震えていることに気がつく。
「レイン、」
アレルギーは大丈夫なの?と聞こうとしたけれど、彼の瞳がそれを制止した。
「手を繋ぐ、はもうクリアしているよ」
「グローブも手袋もしていないわ」
「さっきも問題なかったから」
「でも……」
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