14 抱きしめられなくても

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 でも、私も今はこの手を離さないで欲しいと思ってしまった。指先から熱が伝わっていって、ガチガチにかたまっていた身体がほぐれていく気がする。 「本当は抱きしめられたらいいんだけど」  レインは苦笑するから、私は首を振った。 「ううん、さっきはありがとう」  さっき、強い風から私を引っ張り出してくれた。そのまま抱き留めてくれた。砂や石から私を守ってくれた。それだけでも、彼にとっては命がけだったはずだ。  助けるために抱きしめるのと、二人で並んで抱きしめるのでは、全く違う。  こうして手を重ねてくれるだけでいい。手の温度だけで泣きたくなる。 「レイン、ありがとう」  いつしか気持ちは凪いでいる。あんなに心の中はめちゃくちゃくに吹き荒れていたのに。指先の熱だけでこんなに穏やかになるなんて。 「無事でよかった」  私もレインもそれ以上は何も話さなかった。
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