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でも、私も今はこの手を離さないで欲しいと思ってしまった。指先から熱が伝わっていって、ガチガチにかたまっていた身体がほぐれていく気がする。
「本当は抱きしめられたらいいんだけど」
レインは苦笑するから、私は首を振った。
「ううん、さっきはありがとう」
さっき、強い風から私を引っ張り出してくれた。そのまま抱き留めてくれた。砂や石から私を守ってくれた。それだけでも、彼にとっては命がけだったはずだ。
助けるために抱きしめるのと、二人で並んで抱きしめるのでは、全く違う。
こうして手を重ねてくれるだけでいい。手の温度だけで泣きたくなる。
「レイン、ありがとう」
いつしか気持ちは凪いでいる。あんなに心の中はめちゃくちゃくに吹き荒れていたのに。指先の熱だけでこんなに穏やかになるなんて。
「無事でよかった」
私もレインもそれ以上は何も話さなかった。
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