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第63話(BL特有シーン・回避可)
医師が去るとハイファは僅かに俯いて溜息を洩らした。消沈しているらしい。
「落ち込むなよ、仕方ねぇだろ」
「でも急がないと敵も再生槽から出て退院しちゃうよ」
「宙港には軍が張ってるし、今度はポラも回してある。今できることは全てやってる。大体、不完全なバディは要らないっつったのはお前だぜ。せいぜい養生して復帰するんだな」
「分かってる。けれどもし本当に敵が入院してるなら、そこで整形もあり得る。ポラだってアテにならないよ?」
またも敵が整形している可能性は否定できない。シドもそれは分かっている。
「あれこれ考えても事態は変わらねぇんだ、気を揉むだけ損、早く老けても知らねぇからな。分かったらもう横になって休んでろ、躰拭いてやるからさ」
ハイファが横になってから、シドは洗面所の湯と清拭液でタオルを絞った。戻るとエアコンの設定温度を少し上げておき、ハイファのガウンの紐を緩めて脱がせる。
熱いタオルで顔から拭き始めた。耳から首筋、華奢な鎖骨に白い胸まで優しく拭ってゆく。何度もタオルを絞り直しながら傷だけ避けて腹と背中もタオルを滑らせた。
下着に手を掛けるとハイファは少し身を捩らせる。
「恥ずかしがられても困るんだがな」
「んっ、だって僕――」
言い訳を聞かずにシドは下着を押し下げて足を抜かせた。吐息を乱したハイファが紅潮した顔を背ける。露わになったハイファの躰の中心は、熱く硬く勃ち上がって蜜を零していた。
既に変化を知り指先でもハイファの感情を捉えていたシドは涼しいポーカーフェイスでタオルを巻きつけ扱くように拭く。ハイファは思わず身を反らせた。
「あっふ……だめ、シド、許して」
「許すも許さないもねぇよ、傷に障るから大人しくしてろ」
「もう、それ以上……やだ、はぁん!」
眩暈がするほど恥ずかしくなりハイファはきつく目を瞑る。煌々と灯ったライトパネルの下、それもまだ朝だというのにこんな姿を愛し人に見られているのだ。
過剰反応してしまった躰が疎ましい。自分がどれだけ淫らなのか思い知られ、いたたまれなかった。だがそんな思いとは裏腹に身を横にされ後ろの色づきまで拭かれると声が洩れる。
「はぅん、ああ……や、あん、シド!」
「完全防音だ、気にするな。けど動くんじゃねぇぞ」
「あっ、あ……もういいからやめて……お願い、許して!」
仰向けに戻されたがホッとするヒマもない。とろとろと零れる蜜を拭かれて身を固くした。目を瞑ったまま羞恥に堪える。何度拭かれても蜜は茎を伝い落ちた。甘い声も抑えられない。
「ハイファ、動かねぇって約束できるか?」
「っん、あぅん……どうして?」
「こっちの方が早いからだ――」
熱い吐息が成長しきったものに掛かったと思うと、次には温かなものに包まれている。驚いてビクリと躰を揺らし目を見開く。シドがハイファの茎を半ばまで口に含んでいた。じわりと舌を蠢かされハイファは羞恥と快感とで一気に思考を白熱させる。
「や、シド、何すんのサ、離して、やめ……ああんっ!」
しかしシドは離すどころかハイファの腰を押さえつけ、もっと深く咥え込んだ。熱い舌を這わせ、唇を上下させて舐めしゃぶり始める。ピチャピチャと音を立てて蜜まで啜った。
強すぎる快感にハイファはもう拒否などできない。目に映るのはポーカーフェイスながら、少し眉根を寄せて攻め続ける愛し人の姿である。端正な顔と屹立との対比は淫らすぎ、とっくにハイファの理性をだめにしていた。それでも言葉では抵抗する。
「はぁんっ! シド、やだ……そこは、あうんっ!」
「んっ、ん……んんっ――」
だが本気で抵抗しているのではない、それくらいシドには分かっていた。高い声は何処までも甘い。手応えを得て自らの喉を突きそうなほど深く咥える。
不慣れな行為ながら、先端に舌を潜り込ませ、きつく唇で挟んで扱き上げた。傷に悪いと思いつつ自分をここまで欲する愛しい存在をいかせてやりたい、そんな想いを止められずに夢中で咥え続ける。
「っ、く……痛く、ねぇか?」
「痛くない、はあん……いい、そこ、ああんっ!」
耳を塞がれたようにハイファは世界の全てを遠く感じていた。知覚できるのは腹圧を掛けるなと言う風に愛し人が撫でてくれる優しい手と、慣れない舌づかいがもたらす腰が蕩けるような快感だけである。自分の喉から叫ぶような喘ぎが洩れているのも意識できずにいた。
「ああっ、もう……シド、だめ、はうんっ!」
「だめじゃねぇよ……んっ、いきたければ、いけ」
「離して……いっちゃうから、お願い、許して、ああっ!」
疼きが溜まりきって溢れ出す予兆を感じ、ハイファは腰を突き上げそうになるのを必死で耐える。固くした身からシドが離れて安堵したのは一瞬だった。
いつの間にか立てていた膝を押し広げられ、後ろの蕾に唾液で濡らされた指が挿入される。同時にまた口に含まれた。
前後を攻められ気が遠くなる。それで躰の力が少し抜けた。
「あ、ああ……シド、気持ちいい、おかしくなりそう――」
「おかしく、なんか……くっ、ならねぇよ。いいから、出せ」
低く甘く囁きながらシドは濃厚に舌を巻きつける。体内の指は内襞を掻き回し、ポイントを擦り上げていた。ハイファは朦朧としつつ快感を貪る。見下ろすと愛し人は長めの前髪まで蜜で濡らしていた。それを目にした途端、背筋を昂ぶりが駆け上ってくる。
絶頂感を押し返せず、シドの喉を突く怖さで身動きも叶わず、悲鳴のような声を上げた。
「ああんっ! シドを汚しちゃう、い、やあっ!」
「くっ、う……んんぅ――」
「だめ、いく、いっちゃう……出ちゃうよ、はうっ!」
振り絞るような叫びと共にハイファはシドの口内で達してしまう。思考が白く灼けるような快感を味わいながら、愛し人の口を犯しつつ何度も身を震わせて放った。
やがてハイファはシーツに沈み込む。にわかに自分でも信じられない量を溢れさせたのは分かっていた。それを全て受け止めてくれたシドを見つめる。
するとシドはポーカーフェイスの中にもハイファにだけ分かる笑みを浮かべたのち、喉を鳴らして飲み込んだのだった。
「そんなっ!」
「いきなり何だよ、ビビるじゃねぇか」
「だって、あんなに……ごめん、ごめんね」
「何を謝って……おい、泣いてんのか? 傷が痛むのか?」
焦ってシドはナースコールを押そうとし、それこそ焦ってハイファは止める。こんなところを他人に見られては泣くに泣けない。上体を起こすとシドの逞しい躰を抱き締めた。
「痛くないよ、本当に。すっごく気持ち良かったから嬉しかっただけ」
「やせ我慢はするなよな。無理させて悪かった」
「無理なんかしてない。ありがとう、シド」
手で涙を拭い、微笑んでみせる。翳りのない笑顔にシドも納得し、冷たくなってしまったタオルを絞り直しに立った。つま先まで丁寧にハイファを拭うと新しいガウンを着せつけて毛布を被せ、やることも思いつかなくなってパイプ椅子に腰掛ける。
そして大欠伸をかましながら大声で喚いた。
「ふあーあ。ヒマだし、眠いし、息子は大きくなったままだしよ――」
必死でハイファは寝たフリをした。
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