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「大体さぁ、最初俺がお昼食べようって誘ったのになんで俺の事置いてどっか行こうとするの?あ、もしかして俺以外のヤツと一緒に食べるつもりだった?彼氏である俺を差し置いて?だったらそれこそマジでありえないから」
「あ」
「授業中だってせっかく隣の席なのに、俺が見つめても花子全然こっち見てくれないし。休み時間に話しかけようとしたらすぐ女子トイレ行くし。先にプロポーズしてきたのはそっちなんだから釣った魚に餌あげないみたいな事ホントやめてくんない?」
(コイツ止まんねぇなーーー??!!!)
百目鬼・ウィリアム・万里はめちゃめちゃ喋るタイプだった。しかも全然話聞かねぇ。
(うーわマジか。スゲェ喋るなコイツ…この私がキムタクを挟む隙すらないとは。あと重いわ!)
「ーーでさ、…ねぇ花子、ちゃんと聞いてる?」
その声にハッと我に返る。今は激重マシンガントークに胃もたれしている場合ではないのだ。
「さっ…サーセンした!あ、じゃなくて…」
(うわー…マジでどうっすかなぁ、コレ。)
正直言うともう金輪際コイツと関わりたくはないが、今からそう説得しようと試みれば昼休みの時間など容易に潰れてしまうだろう。
しかし今こうしている間にも時間は過ぎて行くし、そろそろ空腹にも絶えられなくなってきた。
(くそ〜!こうなりゃお望みどおりやってやらァ!)
「花子?」
サングラスの奥から訝しげにこちらを覗く目をしっかりと見つめ返す。
(よし、今だァァァ!!!)
「ご、ごめんね?……万里♡」
「っ?!」
私は心底申し訳なさそうな困り顔&タメ口&まさかの君付けどころか呼び捨てのトリプルコンボをキメてやった。
(っしゃ、これでどうじゃいッッ!!)
ちらりとヤツの反応を伺う。
「えっ…あっ、そんな、いっ、いきなり呼び捨てとか…!」
(もしかして怒った?!やっぱり呼び捨てはマズかったかぁ〜〜!?)
「…本当、花子ってズルいよ…」
そう言って目を逸らす万里の顔は、こちらが恥ずかしくなる程真っ赤になっていた。
(ええぇぇ!?今どきたかが呼び捨てにしただけでそんな照れる?チョロすぎだろ!)
散々女を泣かせてきたような見た目(偏見)からは想像もつかないそのピュアな反応に、私はかなり驚いてしまった。
(なんという意外性…でもよし!これなら扱いやすいぞ!このまま適当に言いくるめてすぐさま優子の元へGOよ!)
「ねぇ、万里?」
「あっ、な、何…?!」
「実は私ね、好きな人にご飯食べてるとこ見られるのが恥ずかしくて…だからしばらくお昼は別々に食べてもいい?」
(なーんて、もちろん嘘に決まってるけどね!)
私は歴代彼氏の前でも牛丼をドカ食いしつつ、お茶をラッパ飲みしてきたような女だ。その食べっぷりから元カレにブラックホールと呼ばれたのは伊達じゃない。
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