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第3話 黒塗りの高級車、特急呪物と化した彼氏
「それじゃ行ってきまぁぁあす!!」
「行ってらっしゃ〜い、食パン喉に詰まらせないようにね〜」
「かしこまりィ!!」
お母様の温かいお言葉を背にバタバタと玄関へと向かう。
今日の起床時刻ももちろん遅刻ギリギリである。
やはり少女漫画ヒロインたるもの、イケメンと曲がり角でぶつかる為のこのルーティーンは欠かせない。
(まぁ昨日既に誰かとぶつかったような気がするけど…いや、多分あれは夢だな。うん悪い夢、いっけなーい!悪夢悪夢!)
そう気を取り直してドアノブに手をかける。
(しゃ!じゃあさっそくいつものやりますか!)
「い゛っっけなー…」
例のセリフを言いつつ、勢いよくドアを開けたその時。
「おはよう花子♡」
「…ッ?!」
そこには悪夢が立っていた。
(どっ…百目鬼・ウィリアム・万里!?!?)
予想だにしていなかった襲来に思わず思考停止してしまう。
「えーっと……え、万里??何で?何で万里がここにいるの???」
「あはっ、来ちゃった♡」
「いや来ちゃったとかじゃなくてね?」
(あーせっかく夢オチにしてやろうと思ったのに早朝から現実つきつけてくるじゃん。何なんだ?一体私が何をしたってんだこの野郎。)
一瞬そう思うも、よくよく考えれば自分が昨日から余計な事しかしてないことに気づいたので、現実逃避のため思考停止モードにチェンジする。
「あのね、何で私の家知ってるの?私教えてないよね?」
「ふふっ、花子ったらおかしい事いうね。俺は花子の彼氏なんだから住所ぐらい知ってるよ」
目の前のナチュラルストーカーはそう言って笑ったが、おかしいのはどう考えてもお前の方である。
「はは!!いくら彼氏でも普通は私が教えない限り、住所なんて分からないと思うけどね!!!」
「あ、もちろん知ってるのは住所だけじゃないよ?花子に関してだったらなんでも知ってるよ。電話番号に生年月日はもちろん、家族構成、銀行の口座番号、趣味、好きなもの、嫌いなもの、」
「待て待てなんか凄いの1個混じってる。え?口座番号?私昨日知り合ったばかりの人に銀行の口座番号知られてるの?嘘でしょ??」
「お金必要になったらいつでも言ってね!好きなだけ振り込んであげるから」
「怖い!要らない!!お巡りさーーん!!!」
そんなやり取りをしていたがふと気づく。
(あ、そうだ学校!)
スマホを取り出し慌てて時間を確認する。この時間なら死ぬ気で走ればギリ間に合いそうだ。
「あら!もうこんな時間!ごめんね万里〜!多分一緒に登校しようと思ってウチに来たんだろうけど、生憎私の登校って陸上部スタイルなんだよね〜しかも朝食取りながらっていうストイックめなやつ?ということでさようなら!!」
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