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まぁいくら陸上部でもさすがに走りながら登下校はしないだろうし、朝食を取りながらのマラソン登校が果たしてストイックなのかも定かでは無いが、とにかく早急にクラウチングスタートを決めその場を立ち去ろうとする。
しかし、そんな私の肩をガシッと万里が掴む。
「遅刻なら心配ないよ。うちの車に乗ればいいから」
「なるほどそう来たか〜!!」
さらっと断る理由を潰され、為す術のなくなった私はいつのまにか自宅前に停められていたいかにもな高級車に乗せられる。
すると運転席には昨日HRをジャックした黒人が、助手席にはトムと呼ばれていた白人が乗っていた。
「あの、万里サーン?この人たちって…」
「あぁ、紹介するね。彼らは俺の執事のスミスとトム。一応ボディーガードも兼ねてるから学校には毎日ついてくると思うけど花子は気にしなくていいからね」
「いやいや気になる、気になるって。埼玉県の普通科高校にスキンヘッドの外国人が二人もうろうろしてたら気になるよ?スルーできないよ?」
「は?何?俺以外の男が気になるって言うの?なにそれ、無理なんだけど」
「違う、そうじゃないそうじゃない」
相変わらず話が通じないので私は一旦万里との会話を諦め、前方の2人に話しかけてみる。
「えーっとあのどうも〜自分、田中花子って言いまーす…。いやー、なんか私まで送って貰っちゃってすみませんね」
すると運転席のスミスさんがバックミラー越しに微笑んで言った。
「いえいえ、どうかお気になさらず。花子様は万里様の大切なご学友ですから我々にも遠慮なさらなくて結構ですよ」
(おぉ、なんかこの人はまともっぽそう…)
温和なスミスさんの態度にいくらか安堵する。
「はぁ?違うから。ご学友とかじゃなくて、花子は俺の彼女兼婚約者だから」
「おや、そうでしたね。ふふ、これは失礼致しました」
隣のめんどくさい奴がめんどくさい訂正を要求するも、スミスさんは穏やかな笑顔で対応する。
するとそこで、ずっと黙っていたトムがボソッと呟いた。
「俺は認めませんけどね、こんな平凡な女」
その一言が放たれた瞬間、ゾッとするような殺気を感じた。
「……おいトム、てめェ今なんつった?」
カチャリと、万里がトムのスキンヘッドに拳銃を突きつける。まさかの二日連続である。
(あーー!まーたこの人自分のボディーガードにチャカ向けてらァ!!)
しかし、トムはその状態でも必死に弁明をし始めた。
「でっ、でも万里様!!有智高才で才気煥発、尚且つ眉目秀麗であり、男の身でありながら仙姿玉質と評される美貌を持つあなたが選んだ相手がこんな普通の女子高生だなんて……!」
そう言ってトムは悔しそうにぎゅっと目を瞑った。
正直語彙力のレベルが高すぎてほぼ何言ってるか分からなかったけど、とりあえずうんうんと頷いて理解してる感だけだしといた。
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