第3話 黒塗りの高級車、特急呪物と化した彼氏

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「ねぇ花子、さっきトムに肩ポンポンってやってたよね?あれ何?俺された事無いんだけど?てか彼氏の前で何やってんの花子?マジで何なの花子?ねぇ花子、花子?花子聞いてる?」 (うわだっっっっっる!!!!!) 朝っぱらだろうがお構い無しに万里はネチネチと尋問をしてきた。 (何なんだよコイツ…適当に聞き流しとけば黙ると思ったのにシカトしてたらずっと花子花子連呼してくるじゃん。おかげで自分の名前でゲシュタルト崩壊しそうなんですけど?) 私はまだこの百目鬼・ウィリアム・万里という男に出会ってたった1日しか経っていないが、それでもこの男が本ッッッッッッッ当に面倒臭いということだけは嫌という程わかった。 (うぉぉお〜!もうこうなったら前回同様アレをやるしかないのか…!) 頭を抱え、そう本格的に悩み始める。 ちなみにアレとはこの面倒臭い尋問から逃れる唯一の術、『万里きゅん好き好きムーブ♡』のことである。 まぁ昨日でいう困り顔&タメ口&呼び捨てのトリプルコンボみたいなものだ。 (万里は案外クソチョロいからそれで何とかなるはず!…あーでも待って、そんなことしたら更にコイツの勘違いに拍車が…) そう悶々としてる間にも隣の束縛野郎は攻撃の手を緩めない。 「ねぇ、花子は俺の彼女でしょ?しかも婚約者でもあるんだよ?だったら花子が触れていい男は俺だけだし、花子に触れていいのも俺だけのはずでしょ?ねぇどうして?こんなに好きなのにどうしてわかってくれないの?本当に花子は俺の事愛してるの?何とか言ってよ花子、花子花子花子花子花子花子花子花子花子花子花子花子……」 (あー本当頭おかしくなる!うん、もういいや、もういい加減黙ってくれ!!) 「しょうがないじゃん!!」 危うく精神崩壊しかけた私は遂に大声を上げ、万里の呪文詠唱をぶった切った。 「…しょうがないって、何が?」 「だって…トムは友達だから普通に触れるけど、万里は好きな人だもん♡恥ずかしくって、気軽に触るなんてできないよぅ…!」 そう渾身のぶりっ子ポーズで言ってみせる。 (はい完璧ィ!!ほらほらどうよ万里さんよォ!愛しの彼女がこんな事言ってんだぜ?もうなんにも言えなくなっちまうよなぁーー!?!?) しかし、そう高を括っていた私に万里はポツリと言った。 「嘘つき。」 「え?」 予想だにしなかった返答に思わず固まる。 「なんで俺に嘘つくの?」 「…ほぇ〜?な、なんの事やら…ぴゅ〜♪ぴゅぴゅ〜♪(花子、口笛のしらべ、春の旋律。)」 内心ヤバいとは思いつつもあくまでしらを切る私に万里は続ける。 「花子って、今まで好きな人ができたら自分から積極的にボディータッチしてアピールしてきたよね?」 「………?!!」 その時ハナコに電流走る……!! ざわ…ざわ… ざわ…ざわ…… 突如突きつけられた事実! 圧倒的……!圧倒的事実…!! (なっ、なぜそれを…!!) ハナコ、まさに崖っぷち……!!
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