第3話 黒塗りの高級車、特急呪物と化した彼氏

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「それと昨日、好きな人の前じゃ緊張して食事が喉を通らないって言ってたけど、今までの元彼氏さんとはいつも一緒にお昼食べてたよね?」 「ヒィィ!何でそれも知ってんの?!あと元彼氏さんって呼び方の嫌な女感すご!」 (にしてもこの状況、非常にまずい……!圧倒的不利…!しかもなんか『ざわ…ざわ…』みたいな効果音流れてるし……このままではこの小説のタイトルが『破滅黙示録ハナコ』とかいうどこぞのギャンブル漫画みたいな感じになってしまう……!) まさに『ぐにゃあ』と空間が歪んでしまうようなその場の空気感は、今すぐにでも焼き土下座を強要されてもおかしくない程に重苦しいものだった。 「あーあ!昨日花子に嘘つかれた時はホントに悲しかったな〜〜〜!!あの時はショック過ぎて何も言えなかったけど、やっぱり結婚を前提としているなら、こういうことはしっかり話し合っていくべきだよねぇ?」 万里は笑顔でそう言った。だけどめちゃめちゃ怒っているので、もうね、目が全然笑ってないんですよ。マジで瞳孔ガン開き。 わっしょいわっしょい!瞳孔バキバキ万里様復活祭りじゃいっ! (ってダメだ、架空の祭りを盛り上げて現実逃避している場合じゃない…!よし考えろ花子 、少女漫画好きの意地を見せるのよ!なにか…なにかこいつの心をグッと掴めるような甘酸っぱいセリフ(言い訳)を……ハッ!) その時、またしてもハナコに電流走る……!! あ、この電流はさっきの電流とは違うやつね?なんかこう、ひらめきとか、絶望の中の一筋の光…的な?(笑)まぁとにかくいい感じのやつだから。 「ねぇ花子。もう一回聞くけど、なんで俺に嘘ついたの?」 万里にそう言われ、私は俯きながらぎゅっと手を胸の前で抑える。 「だって…だって私、今まで本気で人を好きになった事とかなくて、今までの彼氏だって、友達みたいな感じに思っていたからこそ、フランクに接することができていたわけで…でも、初めて本当に好きになった人には全然そんな風に振る舞えなかった。」 「…それって……」 (よし、ここで上目遣い!) 「私、こんなに好きになったの万里が初めてだから…!」 「っ!?」 途端に紅潮する万里。 どこからか流れ出すLove so sweet。 ひときわ強く吹いた風が二人の間を通り過ぎる。 おーもい出 ずっとずっと 忘れない空♪ ふったりが離れていっても こんな〜好きな〜人に 出逢う季節 二度と無い〜♪ 光ってもっと 最高の lady♪ きっとそっと想い届く しーんじーることがすべーて Love !So Sweet〜♪ 「うおヤベ!AirPods接続出来てねぇじゃん!」 そんな声が聞こえピタリと音楽が止まる。 どうやらタイミングの良いLove so sweetの出処はAirPodsを接続し忘れた男子生徒のスマホからだったらしい。ほう、通学Love so sweetとは、中々ロマンチックな男じゃないか。私と気が合いそうだ。
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