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「それに加えご覧なさい!この平凡な顔立ち!スタイル!田中花子とかいうマークシートとかの記入例でしか見た事のないような名前!普通…!あまりにも普通すぎる…!」
「それ名前に関しては逆に珍しいんじゃ」
「黙りなさい。とにかく普通、人並み、在り来り。そんな一般人街道のド真ん中ぶっちぎってきた私は、次第にとある野望を抱くようになったのよ」
「ふーん、その心は?」
「いや、別に謎かけとかじゃないからね?コレ。
まぁいいや、その野望とは!ドゥルルルルルル…デン!こんなにも平凡を極めた私なら、少女漫画の王道!平凡系ヒロインになれる説〜〜〜!!!」
「うるさっ」
「ハイっ、ということでね、えー、私は少女漫画のヒロインを目指し、日々それっぽい行動をすることに全力を注いでいるのですよ、ええ」
そう、私の朝からの行動は意図的に仕組んだものであり、その行動一つ一つが少女漫画ヒロインのテンプレをなぞっている。
「いや〜こんなにも平凡に生まれたからにはもうなるしかないっしょ、少女漫画ヒロイン!」
「ふーん、頭おか…まぁそれはいいんだけどさ、そのために毎回遅刻するのはどうかと思うよ?」
「いやいやいや、遅刻じゃなくて遅刻ギリギリを攻めてるだけだからね?遅刻なんてしたら内申点に響くじゃん」
「嫌だわ〜こんな抜け目ないヒロイン。少女漫画のヒロインなんて抜けててこそだろ。」
「まぁそれはそれとしてね?こんな平凡スペックを極めた私なら、少女漫画ヒロインみたいに曲がり角でイケメンと運命的な出会いを果たせちゃうってワケなのよ!」
「あー、うんうんそうだね。田中さんならきっとできるよ、うん。」
「え、何その突然の苗字呼び。なんか距離置こうとしてない?」
「え?いやw別に引いてないけど?」
「いや引いてるとか聞いてないし……え、引いてるの?ちょっ、優子?急に黙らないで?せめてなんか言って?」
優子に生暖かい視線を向けられつつも、私は背景に薔薇とか抱えちゃってる系イケメンと出会えることを夢見てとりあえず青春を謳歌した。
そして、遂にその日は訪れた。
「い゛っっけなーい!!遅刻遅刻ゥゥウ!!」
バサバサバサーーッ!!
今日も今日とてカラスの群れを蹴散らしつつ、私は町内を爆走していた。
「あ!おいあれ見ろ!食パンババアだ!」
「え、もうそんな時間かよ?やべ!学校遅れっぞ!」
「……」
最近、私は近所の小学生から「食パンババア」というあだ名で呼ばれるようになった。
そして、どうやら食パンババアは遅刻ギリギリになると現れる妖怪として、近隣の小学生達の間での共通認識となっているらしい。
(まぁ遅刻ギリギリなのは間違いじゃないけど…にしてもどこがばばあじゃい!こちとらまだピチピチの16歳だっつーの!)
そう苛立ちを覚えつつ、曲がり角に差し掛かる。
その時だった。
ドンッ!
「どぅおっらぁぁあ!?」
一瞬の衝撃と共に視界がひっくり返る。
私の身体は浮き上がり、視界には青空が写った。
あ、それと宙を舞う食パンも。
(って、これってもしかして…)
少女漫画的展開!
そう思うと同時に背中に強い痛みが走った。
「い゛っっったあぁァァァァ!!!」
「あの、すみません、大丈夫ですか?」
私が叫んだ瞬間、そう男性の声が聞こえた。
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