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「ではバンリ様、自己紹介お願いします」
「えー、香港から来ました。百目鬼・ウィリアム・万里です。父の組織…あー、いや、会社を継ぐため日本へ勉強しに来ました。よろしくお願いします」
そう言って彼はペコッとお辞儀をした。
(あーはいはい、なるほど香港ね〜。怪しさ満載のビジュアルに加え、高校生とは思えない程手馴れたチャカの扱い。そして父の組織…これから察するに、お父様のご職業は香港マフィアってとこかしら?ふふっ、よろしくできね〜)
私はもう、なんか1周回って穏やかな気持ちで話を聞いていた。
(まずいまずい♪ホントにまずいな〜!マフィアの息子にあんな態度とっちゃったんだ、私。もぉー、花子ったらおてんばなんだから!うふふ!
あーもういっそ殺してくれ。)
やっぱり穏やかじゃいられなかった。
「あと、1つ言いたいことがあって…」
「?」
彼のその言葉に反応し、なんだなんだとつい顔を上げたのが運の尽きだった。
「…!ひっ…」
百目鬼・ウィリアム・万里は私を見ていた。
しかも瞳孔バッキバキで。
慌てて再度教科書で顔を隠そうがもう後の祭りである。
(あ、終わった。え、なんで?なんで見てるの?あ、さっき私が殺してくれって思ったから?いやいや嘘じゃん、全然まだ生きたいんですけど〜120とかまで。ギネス載るレベルで。てか、え?心読んだの?えー怖怖。何なんですか?エスパーなんですか?)
私がそんな事を考えている間にも、百目鬼・ウィリアム・万里は近づいてくる。
助けを求めようと横目で優子を見れば、もう既に私の遺影に向け合掌していた。
(この優カスがぁぁあ!私まだ死んでねェから!てかアイツなんで私の遺影持ってんだよ?!うーわ線香上げ始めたよマジありえねぇ)
そして遂に彼が、私の机の前でピタリと足を止めた。
線香臭い中、じわっと嫌な汗が流れる。
恐る恐る教科書を下げると、再び瞳孔バキバキ☆万里様と目が合った。
(…今から人殺すヤツの目じゃん……)
「田中花子さん、だよね?」
開口一番、目の前の男はそう言った。
「…え」
(ヒィィ!なんで名前知って!?)
「ほら今朝、俺と曲がり角でぶつかったよね?覚えてる?」
「あー、えーっと……」
忘れたとは言わせない。そんな無言の圧を感じた。
(クッソォ〜!いざとなったらしらばっくれようと思ったのに謎に圧凄いし、なんか名前バレてるし!)
私が彼に無礼を働いたことを認めようものなら、先程トムに向けられていた銃口が、今度は私の方に向いてしまうかもしれない。
だがしかし、バッチリ顔を見られている上に名前までバレているので、シラを切るのはどうやら無理そうである。
(よし!もうこうなったら土下座しかない!兎にも角にも土下座よ土下座よ!謝って謝って、命乞いしまくるしかねぇぇぇええ!!!!!)
ガタッ!
半ばヤケクソ気味に私は立ち上がった。
百目鬼・ウィリアム・万里、謎の黒人、しれっと教室に戻ってきたトムを含め、クラス中の注目が私に集まる。
そんな張り詰めた空気の中、私は覚悟を決め口を開いた。
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