第1話 少女漫画と反社会的勢力

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第1話 少女漫画と反社会的勢力

私、田中花子の朝は《遅い》ー。 8時30分。 9時から学校のHRが始まるというのに、毎回この遅刻ギリギリの時間に『あえて』起床するところから私の朝は始まる。 「ん〜っ、あ゛〜よく寝たわ〜......よし。」 すぐに布団から飛び起き、バタバタと慌ただしく制服に着替え、髪をとかしつつ歯を磨く。 そして素早く食パンを咥え、玄関の扉を開いた。 (ここまで約5分ってとこか…。フフッ、中々悪くないわね) そう思いながら、肺いっぱいに空気を吸い、いつも通りの様式美を遂行する。 「い゛っっけなーい!!遅刻遅刻ゥゥウ!!」 バサバサバサ…! 独り言にしては少々デカすぎる私の声量に驚いたカラスの群れが飛び立っていく。 毎朝気の毒だなとは思いつつ、はらはらと黒い羽が舞い散る中、今日も全速力で町内を駆ける。 (と、ここで心の中で自己紹介……私の名前は田中花子!どこにでもいる普通の高校生☆…よし。) 今朝も無事ノルマを達成することができ、走りながらガッツポーズを決める。 (ああっ…!最高、最高よ田中花子!今日もなんて完璧な『平凡さ』なの!!) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「……っはぁ、はぁ、ギリギリ、セーフ...!!」 「いや別にギリギリでもないし」 爆走登校を済ませ教室に入ると、友人の鈴木優子が私にそう告げた。 「え?」 「まだHRまで15分もあるから全然余裕でしょ」 「な、なんですって…?」 彼女の言葉に膝からゆっくりと崩れ落ちた私に、出処不明のスポットライトが当たる。 「え、何?今からミュージカル始まる?」 いちごミルク片手の優子はまるで他人事だ。 「そんな…起床時間は私が全力で走ってHRの13秒前に学校に到着するよう設定しているはず。なのにこんなに余裕を持って登校してしまうなんて…ハッ!まさか毎日走りすぎて足が早くなってしまった…?」 悔しさに思わず唇を噛み締める。 「あぁぁあああ!!畜生ッ!これじゃ平凡の風上にも置けないじゃない!!」 「うわ急に叫んだ怖」 優子とかいう名前にしか優しさ要素のない女はいちごミルクを飲みつつそう言った。 「はぁ、ホント最悪...。毎朝わざと遅刻ギリギリに起きて、食パン食いながらダッシュで登校してたら運動能力向上しちゃうなんて...」 私がそうため息をつくと、優子はいちごミルクを吹き出した。とても汚い。 「だははは!ちょw、なにそれwwwあんた、毎朝そんなことしてたの?ふっ...w、少女漫画ヒロインかよwwははは!」 「え?いやいや、どう考えても少女漫画ヒロインだろ、私。」 私がそう言うと、先程まで抱腹絶倒だった優子は、ポカンとこちらを見つめる。 「.........は?」 「いや、だから、私は少女漫画ヒロインなんだってば」 「うーん、2回聞いても意味わかんねぇわ」 やれやれ、ここは理解力のない優子にしっかり教えてあげねばならない。 「いい?私の身長は日本人女性の平均である157.5cm、血液型は日本人全体の40%を占めるA型。その他にも学力、体力、視力などなど…そのどれもが全国平均とピッタリ同じ数値なの。凄くない?ねーマジで凄くなーい!?」 「え?あー、うん?」
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