晩夏

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 男子が前で、女子が後ろ。  男女で遊びに行ったらこれが普通なのだろうけど、必然的に距離が出来てしまっているこの状況が私は嫌で。もっと涼太に近づきたいし、いつものようにしれっと隣に行ってしまえばいいのだけれど、隣にいる友人たちに私の気持ちが知られてしまうのは嫌だし、隣に行ったことによってなんて思われるか分からないから、俯いて友人たちに歩調を合わせている。  私は他に友達がいない。  この二人だけが友達。  でも──友達がいる花火大会がこんなにも面倒で、嫌いなんだって初めて感じた。  一度、屋台の端から端まで歩いて、それから食べたい物を買おうって話になり、自分の体温と同じくらいの気温の中を、私たちは必死に人混みを避けながら歩き続けた。それがなんだか馬鹿馬鹿しく思えた私は、お気を大きく吸って溜め息をつこうと視線を上げた時、涼太が一瞬だけこちらを振り返った。  気を抜いていたから、絶対間抜けな顔を見られた。それが物凄く恥ずかしくて、汗で乱れている前髪を整えながら、いつでも涼太が振り向いてもいいように身構えていると、涼太はその後もチラチラとこちらを振り向いていた。  その行動が何の意味を表しているのかは分からなかったけど、私の期待は加速していくばかりで。急に女を出すように髪を弄り始め、友人たちよりも一歩前に出て涼太に近づこうとした刹那、視界が突然黄色になった。そしてすぐに大きな音が響き渡る。  空を見上げれば火薬がふわふわと広がっていて、何となくじっと眺めていると、2発目、3発目と通津から次へと花火が上がっていく。  本格的に花火大会が始まり、驚きと美しさから私たちは思わず立ち止まって、花火を見上げていた。 「綺麗……」  そう呟いた夏美の声がやけに大きく聞こえたのは、きっと気のせいで。確かに花火も綺麗だけど、同じように星も綺麗だった。
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