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霊媒師?か何かに扮したスタッフが、いかにもな暗い声を作って説明してくれる。ちなみにカイクラ、というのはこの遊園地の名前。カイクラハピネスパーク、というのがこの遊園地の名前なのだ。カイクラ、というのは創業者の名前だと聞いたことがある。
「このカイクラ病院は、今から三十年ほど前に廃業になった場所でございます。この、カイクラハピネスパークがある前からある建物で……本来ならば遊園地ができると同時に取り壊される予定だったのですが。解体工事を行おうとするたびに事故が頻発、やむなくそのまま放置されているという状況なのでございます。この病院は、昔違法な手術などを数多く行っており、その結果多数の人が亡くなったという噂があり……」
つらつらと、スタッフがこのお化け屋敷の“設定”を説明してくれる。
「……そのようなわけですので、このままでは大変困るということで。今回皆さまのお力を借りて、除霊を行わせていただくことになった次第でございます。今から、皆様には一人一枚ずつお札を配ります。そのお札を、最奥の“手術室”の扉に貼り付けて、また戻ってきてください。手術室にいる怨霊が原因ということまではわかっているものの……残念ながらわたくし一人の力では、到底封印するに足らなかったのでございます。どうか、お力添えを戴きたく存じます」
――いやいやいやいや、プロの霊能者がどうにもならなかったものを素人に頼むってどういう設定だよ!?フツーにおかしいだろ!?
心の中でツッコミを入れるも、当然声になど出せるはずもない。やがて、いかにも、なチャチなお札と懐中電灯が全員に配られる。そして、スタッフが一組ずつ、待合室の奥の扉へ客を案内し始めた。若いカップルが一番手、次が夫婦と小さな女の子と男の子の家族連れ、最後に僕とカズハといった具合だ。
待っている時間はきっと数分にも満たなかったことだろう。それでも僕は、緑色の薄暗い明かりしかない待合室に、カズハと二人で待たされるだけで怖くて仕方なかった。いくら、作り物のお化け屋敷だとわかっていてもだ。
「わくわくしちゃうね!」
相変わらずそんな僕をよそに、彼女は心底嬉しそうに声を弾ませていたわけだが。
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