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1.探し物とハムスターのお人形
「あ、かわいい!」
絵の具のセットが入っていると思って開けた箱には可愛らしい人形や、文房具が入っていた。ラメの入った細いペンや、レターセット。ご当地物の子猫のキーホルダー。少し古びているが、心引かれる小物が沢山入っている。
「これ、お母さんのかな」
私は思わず目に付いた手乗りサイズのハムスターの人形を手に取った。とぼけた顔が可愛くて、膨らんだほっぺを指で突ついたら、思った以上に手触りが良くて、夢中になってしまう。
「心晴ちゃん、あったー?」
台所にいるお母さんの声に、はっとした。
「まだー!」
いけない、絵の具セットを見つけなきゃ。明日授業で使うのに!
ひとまずハムスターを邪魔にならない場所に避難させて、他の段ボールを開けていく。途中で夕ご飯を作っていたお母さんが様子を見に来てくれた。
「どう、見つかった?」
ちょうど三つ目の箱を開けようとしていたところだ。
「今からこれを開けるところ」
ラベルには本と書いてあったが、中を開けると去年の教科書や探していた絵の具のセットも入っていた。
「あったー!」
「よかった、見つかって」
絵の具を取り出してから、他にも必要な物がないか見ながら箱を閉じていく。とうとう最後の一つを見て、お母さんが言う。
「あら、懐かしい」
やっぱり最初の箱の中身はお母さんの物だったみたい。
「これ、お母さんの?」
「そうよ。昔の宝物だったの。心晴ちゃんも、こういうの好き?」
「うん! 好き」
そうして、すかさず最初に取り出したハムスターの人形を手に乗せて見せた。
「あのね、このハムスターの人形、もらっていい?」
「そうね……仕舞ったままでいるより、心晴ちゃんに可愛がってもらった方がいいかしら。いいわよ」
「ありがとう!」
絵の具のセットとハムスターの人形を持って、私は自分の部屋へと戻った。
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