3人が本棚に入れています
本棚に追加
4.土御門颯真君
翌日、起きると一番に枕元のお菓子の箱をのぞき込んだ。
ハムアキラが寝る場所がないので、急遽お菓子の箱にタオルを敷いてベッドにしたのだ。スピースピーと真っ白いお腹を無防備に晒して寝息を立てるハムスターの姿にほっとする。
「やっぱり、夢、じゃ、なかったんだ……」
「ふむぅ。もっと……食べたい……じゃ」
夢の中でも何か食べているのか、ハムアキラの口はもぐもぐと動いている。そういえば、ハムアキラも朝ご飯食べるんだろうか。
考え事をしていたところで、お母さんの声が聞こえた。
「心晴ちゃん 、起きてるー?」
「今起きたー!」
「急がないと、もうすぐ七時半よ!」
「え、うそ!」
今日は月曜日だ。急がないと遅刻しちゃう。
気持ちよさそうに眠っているハムアキラはそのままに、私は急いで着替えて顔を洗って、胸まで伸びた髪を耳の下で二つにくくると朝ご飯を食べに行った。
なんとか八時過ぎには家を出て、通学路を歩いて行く。手には昨日探した絵の具のセットもしっかり持っている。
「朝からハムアキラと話す時間がなかったな……」
お母さんも仕事でいないし、昨日の調子ならお腹がすいたら台所にある物を勝手に何か食べるだろう。
学校までは、歩いて十五分。走らなくても間に合いそうだ。
でも、いつもより遅いからか、顔を知っている人は少ない。
「あ、土御門君」
角を曲がったところで、同じクラスの土御門颯真君の姿が見えた。彼も二年生の時に家の都合で引っ越してきたと聞いている。京都の出身らしく涼しげな目元をしていて、性格はクラスメイト曰くクールな感じらしい。まだあまり話したことはないけど、他の男子みたいに騒いだりしている姿は見たことない。それでいてクラスの委員会決めとかでは男子達からも一目置かれているようだった。
「おはよう」
「あ、おはよう」
颯真君に挨拶を返すと、すっと前を向いて歩いて行く。
他の人達が急いでいるのを見て、私も足を速めた。
最初のコメントを投稿しよう!