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魔の存在
魔が差した。
そうとしか言いようがないと思う。みんなの前で褒められることもなければ、怒られることも、悪口も言われない、何なら学校を卒業したら記憶にすら残らないような、どこにでもいるのに、どこにいるのかわからない平凡な人生が続いていくのだと決めつけていた。
悲観しているように見えるかもしれないけど、今時の高校生なんてそんなもの。SNSで目立つ子は、普通ではない何かを持っていてきちんと行動している、ほんの一握りの特別な存在だ。ネットを使えば、誰でも個性や特技を発揮して自分らしく輝ける!なんて、簡単にいわないでほしい。親も「今はネットでどうにでもなるんでしょ? あんたも、ダラダラしてないで、何か始めてみたら?」なんて言ってくるけど、冗談じゃない。
何かって何?
ネットがなくて簡単に発信できなかった時代を生きてた人はいいよね。自分に個性がないのも、特技がなく目立たないのも、「手段がなかった」と言い訳し放題。簡単にできるってことは、「発信する」こと自体に価値がなくなるんだよ。だって、みんなできるんでしょ? みんなが特技披露合戦を始めたとして、誰が見るの? 誰にも見られなくていいなら、発信する意味なんてない。
だから、発信し始めた人は、より強く、過激に、面白くしなきゃ!となるのも当然だ。だって、じゃないと埋もれちゃう。どうしたら、この個性の渦から自分を見てくれるの。見続けたいと思ってくれるの。気づいたら「自分らしさを発信」ではなく、「見てくれる人の願望に沿うものを発信」へと変わり、力関係は逆転する。
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