魔の存在

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 グループのリーダーというか、陽キャ担当の美央は「まずは足だけ見せりゃいいじゃん。新作の服でーすって、ミニスカを1着だけ混ぜとけばあざとくないっしょ」と悩むほどでもないといわんばかりだった。 「そうなんだけど。でも、それでもっと…とかってなったら、ちょっと」 「は? 足見せても、ノーリアクションかもしんないじゃん。求められると思ってんの? めっちゃ自信あるんだね。ウケる」  春香が渋ると半笑いで煽ってくる。美央にとったら、どっちに転んでもおいしいに違いない。動画を始めてから、春香のかわいさが光り出しているのが、気に食わないのかもしれない。  結局、春香と春香のお兄さんで大学1年の高志さん、私の3人で相談し、露出系ではなくちょっとヒヤッとする動画を試してみることにした。  春香の迷いを断ち切ったのは、高志さんの男目線の意見だった。 「一度、やったらキリないよ。足見せたんだから、肩くらい出しても平気だよ。こっちのお願いもきけよって言い始める。そんなのオンラインストリップじゃん。しかも、永久に消せない。やめとけ」  元々、乗り気じゃなかった春香は、オンラインストリップ、消せないの言葉で露出系はきっぱりやめたようだ。それで、よかったよかったとはいかない。露出を望む人たちは見なくなるだろうから、違う方法を考えなければならない。  そこで、思いついたのが「ちょいヒヤ」動画だ。日常でありそうな、ちょっとヒヤッ、ドキドキすることを撮影する。犯罪や迷惑行為ではなく、夜、神社に散歩に行ってみるとか、普段、通らない裏道を歩いてみる、平日の朝、下りの各駅停車でどこまで行けるか。そんな「やってみたいけど、できない、やってないこと」を撮影してみようとなった。
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