魔の存在

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 最初は深夜のコンビニに行って買い物程度のこと。ボディーガードの意味合いも兼ねて、高志さんが撮影し、春香はスカートではなくパンツ姿だ。予想通り、露出待ちの男性視聴者は減ったが、代わりに女性や上の年齢層の視聴者が増えつつあった。倍増!とはいかないが、再生数のためにやりたくないことをガマンしてやるよりは圧倒的にストレスが少なく、批判的なコメントがあってもそんなに気にせずいられるそうだ。  予想以上にうまくいったことで調子に乗ったのだと思う。その心のすき間に、ふと、魔が入り込んだ。  お昼休みの教室で夏に向けた動画の相談をしていると、美央が「心霊スポットでも行ってきなよ! 車が必要なら、彼に出してもらうよ」と参加してきた。 「また美央は、そうやって過激なことばっか提案してくるー」 「この間のことはごめんって。ちょいヒヤ動画、見たよ。割といいなと思ったから」 「あ、見てくれたんだ。ありがとう」 春香がにっこり笑うと、美央もつられて笑う。 「んで、やっぱ、夜の学校とかが再生されてんじゃん。夏といえば、心霊系でしょー。それなら心霊スポットに行くしかないっしょ」 「えー」  当然、拒否するだろうと思いながら、春香を見ると迷っているのがわかった。それもやる方に傾いているようだった。 「有名スポットじゃなくてそれらしいところで、ちょっと撮影すればいいじゃん」 「……それらしい、ところって?」 「んー、さびれた商店街とか空き家とか。それなら霊もいないだろうし」 「確かに…」 「ちょっと、春香までそんなこといって。そういうところだって、霊がいるかもしれないじゃん」 「そりゃそうだけどさ。有名なとこに行くより安心じゃない? それに、霊感なければ同じでしょ」
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