裂人のあいさつ

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裂人のあいさつ

 離婚式当日は気持ちのいい青空だった。  緑あふれる、カジュアルなガーデンパーティ。司会者に呼ばれ、僕は挨拶に立つ。  横を見ると、優さんと玲奈さんが、それぞれの席に離れて座っている。  僕は息を吸い込み、話し始めた。 「ただいまご紹介にあずかりました、裂人(さこうど)の加川悠斗と申します。  優さん、玲奈さん、本日はこのような式に招いていただきありがとうございます。  最初『裂人として挨拶を』と言われた時は、なんの冗談かと思いました。一年前、私達は確かに皆さんと二人の結婚を祝ったはずです。何が原因でそんなことになるんだ、と思いました。    でも、私の人生を振り返ってみると、決して問題のない人生とは言えませんでした。いくつもの選択肢があったし、一つの後悔もないと言えば嘘になります。  皆さんもそうではないでしょうか。  優さんも玲奈さんも、それぞれご自分のこれからを考え、ここで夫婦という形にけじめをつけよう、と決断されました。    夫と妻としての関係は終わりですが、全く交流がなくなるわけではありません。これから友人として二人は生きていきます。  僕にとって二人は、変わらず大切な人です。心からこれからの人生を応援したいと思います。  皆さんも、僕と同じ気持ちであれば幸いです。 
 お二人の新しい門出をお祝いすると共に、それぞれの末永い幸せをお祈り申し上げます」  拍手が起こる。  心なしか、固かった参列者の表情がほぐれて、明るくなったような気がした。  優さんも玲奈さんも笑っている。 「これでよかったんだな」と僕が思うのに足る、晴れやかで素敵な笑顔だった。
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