愚痴

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愚痴

「……ってことがあったんだけど!」  語尾がついつい荒くなって、僕はあたりをうかがう。カフェの客は誰も気にしていないみたいでホッとする。向かいに座るマサ君も涼しい顔だ。 「いいじゃない、優さん独身に戻ったんでしょ? 挨拶の一つや二つ、してあげなさいよ」 「でもさぁ、こんな複雑な気持ちで挨拶するってなんか……」 「いーじゃない、好きなものは好きなんでしょ」 「他人事だからって好き勝手言って……」 「他人事ですもの」  マサ君はニヤニヤしながら、イチゴパフェを口に運ぶ。  ガタイのいい坊主頭がオネエ言葉で話しているのでギャップがすごい。  マサ君はゲイバーでできた友達で、たまに一緒に買い物する仲だ。 「離婚した理由、価値観の不一致って言ってたけど……どうも歯切れが悪いんだよね」 「ふうん」  マサ君はなにやら考え込む。僕は鮭とほうれん草のクリームパスタを一口食べた。少し、昔作った味に似ている。  昔、料理が苦手な優さんにかわって、ごはんを作ってあげたら「中学生にやらせるなんて」と恐縮していた。だけど最初に作ったカレーをすごく気に入って「うまい、うまい!」とバクバク食べてくれた。  嬉しくていろんなメニューを覚えた。こういうパスタも作った。唐揚げ、カレー、肉じゃが……ごはんの話をするようになって、一気に距離が縮まったっけ。 ――また優さんに手料理食べてもらえるかな。    そんなことを考えていると、マサ君が「ひらめいた!」と顔をぱあっと明るくした。
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