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過去
男の人が好きだ、と気づいたのは高校生の時。
下ネタや恋愛話で盛り上がる皆に合わせる度、心は傷ついた。男の人が好きだなんて言えるわけなかった。
家に帰ると、居場所があってほっとした。
だけどだんだん、優さんの手が触れたり、ふとした瞬間に意識するようになった。
やばい、と思った。男の人が好きなのは、まだいい。隠して、僕が傷つけばそれでいい。
だけど、同居してる親代わりの人を好きになるなんて。それはやばい。
抑えようと思えば思うほど、気持ちはつのった。
優さんをいちいち、目で追ってしまう。ソファの横に座るのもドキドキしたし、寝顔を見ると唇に視線がいってしまう。
今でも鮮明に覚えている。
その日の夕飯は冷やし中華だった。優さんは翌日から出張で、居間の隅にはスーツケースが準備してあった。
僕が「明日は友達と夏祭りに行く」という話をした時、優さんが言い出したのだ。
「女の子からお誘いはなかったのか?」
「ないよ」
――あったけど、断ったよ。僕、男の人が、優さんが好きなんだよ。
喉まで言葉が出かかったけど、言えるわけない。
それで終わりになるはずだった。
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