過去

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 翌朝、LIMEが届いていた。 「昨日のことは聞かなかったことにする。  出張行ってくる」  何度も読み返すうち、画面にぱたり、と涙が落ちた。夏祭りも行かなかった。  あんなこと、言うんじゃなかった。  帰宅した優さんはいつも通りだった。  僕も蒸し返さなかった。「あの告白は勘違いでしたよ」という顔をして過ごした。大学進学を機に一人暮らしをして、社会人になり、それでもあの日のことは記憶の奥底にあった。  マサ君との買い物を済ませ、駅で別れる。なんとなく書店に入って、「冠婚葬祭」のコーナーへと足が向いた。予測はしてたけど離婚式の本なんてない。挨拶どうしよう。  急にスマホが鳴った。LIMEを開くと名前に「れな」とある。紫陽花(あじさい)のアイコン。  絶妙なタイミングに、恐る恐るメッセージを開く。 『こんにちは。  悠斗君、裂人を引き受けてくれてありがとう。  お礼がてら、悠斗君がよければ一緒に食事できたらと思います。  ご都合はいかがですか?』
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