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招待状
「話がある」と叔父の優さんに呼び出されるのもこれで何度目だろう。
初めは、両親を亡くした僕のために、「家族になろう」と言ってくれた。一緒に暮らし始めて、僕が大学進学で家を出てからは頻度が増えた。社会人の心構えを教えてくれたり、相談に乗ってくれたり、ずいぶん支えられている。
でも優さんが結婚してからも、月1回は声がかかって僕は心配になった。
「新婚さんなのにいいの?」
「こういう時間も大事だろ」
優さんはあんなことが昔あったのに一緒に過ごしてくれる。
でも親代わりだからしてくれているんだと思うと、僕の胸の内は複雑だった。
僕は優さんのことが好きだ。笑顔も、大きく包み込んでくれるような優しいところも好きだ。数え上げたらキリがない。
今日も「話がある」と呼び出された。
家の最寄り駅近くにある居酒屋は、ほぼ満席だ。優さんは少し遅れてくるという。メニューにも飽きて、僕はバッグから封筒を取り出した。
中身は離婚式の案内だ。
優さんと玲奈さんは一昨年知人の紹介で知り合い、短期間で結婚までたどり着いた。二人とも、新婚にしてはドライな印象があったけど、まさか離婚とは。
――式まで挙げなくてもいいのになぁ。
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