キミのこころを知るくすり

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車内に奇妙な沈黙が生まれたが、次の信号待ちで彼女は口を開いた。   「私の家では……私の食事に少しずつPPMを混ぜることで、普通の人にはない力を発揮できるよう身体をつくってきた。 おかげで私、体育の授業や習い事では人より活躍できたし、大好きな男の子を守ってあげられることが、嬉しくて仕方なかった」 は、として隣を見ると、ミツキの黒い瞳とぶつかった。 「あなたのことよ。屋城トウヤ」 まさか、ミツキが俺に好意を持っていた? トウヤは信じられない気持ちで彼女の言葉を聞いた。 そんな、いつから。まさか今も? トウヤの動揺をよそに、ミツキは淡々と言葉を紡ぐ。 「チャリオットは確かに経済的に恵まれてる。将来も保証されてる。くすりの使用を許可されてる人はこの国の5%しかいなくて、一部の選ばれた者だと特別視する風潮があるのは確か。 けどね、そんなに素晴らしいくすりなら、どうして国民全員の権利としないのかしら? 副作用もない。アレルギー反応も今のところない。安全なくすりだって言われてる。 だったら希望する人みんなに使ってあげればいいのにね? わざわざ使用者を制限するのはどうしてだと思う」 「まさか……何かあるのか? 使用者を蝕む不利益が」 ミツキの白くて細い指先が、ハンドルから滑り落ちた。
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