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ビールを喉に流し込むと、冷たさが全身に染み渡る。心地よい浮遊感に、思わず目元がふにゃりと緩んだ。
「ダンの就職先って、オモチャや雑貨を扱う会社なんだっけ? お前は人と話すのが得意だから、営業ってのは適職かもな」
かつて、教室の隅でひとり背中を丸めていた根暗少年に、積極的に話しかけてきてくれたダン。どうやら今も昔も、彼の性格は変わらないらしい。
「そういうトウヤは、いっつもトラブルに巻き込まれてた印象があるな。上級生にナンクセつけられたりしてさ。そのたびにほら……あの女性が助けてくれてただろ。ええと、なんつったか」
「ミツキとはもう連絡を取り合ってないよ」
「そうなんだ?」
西野ミツキ……自分たちよりひとつ年上の女の先輩。
ダンにとって彼女は学校の有名人程度の認識しかないだろうが、トウヤとミツキには浅からぬ縁があった。
ミツキはかつて、トウヤの家の近隣に住んでいた。
幼稚園から小学校、中学校まで同じで、男女分かれて遊ぶような年齢になっても、ミツキとは変わらず仲が良かった。彼女が行くといえば背丈の2倍はある石垣にだって登ったし、ぜったいに勝てるはずもない駆けっこにも付き合った。
ミツキは幼少期から「PPM(perfect power medicine)」で身体強化した人間ーーチャリオットだった。
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