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29 腹黒婚約者?
一方でそれを教えられた側のソフィアだが彼女の前世は某大手電気機器メーカーの新製品開発部署の研究職員。
当然研究開発好きの本質が刺激され――研究オタクの性だろう――魔法の仕組みに夢中になった。
そして当時8歳だったシルファ王子のスパルタ式講義の甲斐あって、野生の魔法使いでしかなかったソフィアは以降魔法理論に基づいた魔法の構築を齢6歳で考える癖がついた。
簡単に言えば魔法を使う前に一旦考える癖がついた、とも云うのだがそのお陰か所構わず魔法を発動することはなくなり無意識に転移してました~! なんてことはどんどん減って行ったのである。
ただ、基本的にはイメージ優先なのは相変わらずで慌てると前世に経験した情報が最優先になり知っていたものをそのままコピーしてしまうのだ。
冷静に考えて作ったように見えていたが、本人も言っていた通り今回も『即席』なので従来品? にほぼ忠実な出来になってしまったのである。
――著作権に引っ掛かりそうな案件ではあるが、まあ此処は異世界なのでそれを問われることはない。
「慌てると不必要な機能を省くことを心がけるのを相変わらず忘れるのだな。まあ、今回はそれだけ危険だったんだろう」
「う。ごめん」
まぁ彼女に魔法理論や繊細な魔法の操作を教え続けたお陰でシルファ王子自身も魔法への造詣がより深まり魔王のように魔力のあるソフィアと総合力で『どっこい!』程度には強くなったのは僥倖だったのだが・・・。
「でも! 魔物を捕まえたら色が変わるのは私のオリジナルなのよ?」
それでも少しは考えたんだもんッ! とシルファに食い下がるソフィアである・・・
×××
対するシルファ王子側は王族、しかも次期国王として自分があまり強いだとか、頭が良いだとか、いらない優秀さをひけらかすと将来的に王座を引き継いだ時に起こるであろう貴族との化かし合いという軋轢が面倒になりそうなので、そこそこ手抜きをして凡庸なフリをして過ごしている――但し顔がイイのは流石に凡庸からは見放された―― のが実情でソフィアに比べると顔は良いが婚約者と比べてやや劣るような印象を周りに与え続けている。
実際そのお陰? で、学園の3年間は成り上がり希望貴族令嬢ホイホイの餌にシルファは自ら演じていおり、それに引っ掛かった邪魔な貴族家とその令嬢達は何らかの形で罰を受けており、後の国王としての執務の障害になりそうな貴族家はほとんど排除してしまった。
――婚約者を囮にして自ら暗躍する実に腹黒い王太子である。
リーナに関しては、平民という無害な身分だったのが最後まで残っていたというのが実情だったが、結局シルファ王子の逆鱗に触れて彼女もド田舎に飛ばされた・・・
――それもまあ、昨日までの事であり、勿論その計画自体をソフィアもアジェスも了承済みなので、卒業パーティーのリーナの件が婚約破棄騒動にならなかったのはそういう訳だ。
因みにアジェスが台本を見て面白がり、アドリブを勝手にかまして来たせいで若干シルファが呆然としていたので無表情だっただけで基本的に3人共仲は良い。
×××
「でもさ魔力が自分よりあるヤツなんか捕まえても結局の所扱いに困るでしょ? 閉じ込めとくだけになるもの」
「まぁ、魔物や魔獣ならそうだね」
「それ以外に何に使うのよ?」
それには答えずニッコリと笑顔を見せる王子殿下。
「さ、闘技場でベヒモスを出してみよう。ひょっとしたらもう大人しくなってるかしれないだろ?」
そう行ってソフィアの腰に回していた手を肩に置いて彼女を辺境伯邸の外にある闘技場へと華麗にエスコートしていくシルファ王子。
2人のやり取りを黙って見ていたアジェスが
――うぜえ令嬢とか、犯罪者とかに使うんじゃ・・・ あとソフィアに言い寄る心臓に毛が生えてる奴?
そう思ったらしい。
クワバラクワバラ・・・
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