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25 転生者特典 〜王子視点⑧過去〜
次の日の夜中またもやソフィアは意気揚々と俺の寝室にやって来た。
いや、よく考えたら魔法の勉強より淑女としての嗜みを教えたほうがいいんじゃないか?
もうコイツ6歳だよなマズくないか?
一瞬だけ真面目に従姉妹の貞操観念の緩さを危惧したが、自分の為に口に出すことは止めることにした。
そもそも彼女が遊びに来なくなるとつまらなくなるのは俺の方だと気がついたからだ。
「ねえ、こんな本でどうかな~?」
彼女は古代語混じりの魔法の本を差し出してきた。
おいおい、もう習ってるのかよ?
「ソフィア、もう古代語習ったのか?」
「え? 古代語ってナニ?」
「この本は全部じゃないけど、今は使われてない古代語があちこちに書かれてるんだけど?」
「え、習ってないけど全部読めるよ?」
「・・・ なんでだ?」
「わかんないけど転生者特典かな?」
聞けば前世でそういう概念があったらしく、曰く転生者は色々と便利な機能を搭載して生まれ変わるらしいのだがそれを転生者特典と云うらしい。
「ずるいな俺めっちゃ勉強して覚えたんだけど」
「えー、だって読めるんだもん仕方ないじゃん」
「・・・まぁ、手間が省けていいか」
俺は流すことにした―― 妬んでも仕方ないじゃん。
「じゃあさ、何処まで読んだ?」
「読んでない。選ぶだけであっという間に入場時間が終わっちゃったから1冊だけ無理やり借りてきたんだ」
何でも禁忌図書まで揃っているため入室許可と制限時間があるのだそう。
「へー、機会があったら入ってみたいな」
「辺境に来れるの?」
「分からん。叔父上が辺境伯領に俺が行くのを妨害するかもなぁ」
「何で?」
「・・・」
俺はそれには答えず本を開いたけど、心のなかでは――当たり前だろ? 何で叔父上が王都にお前を連れて来たがらないのか考えればわかるじゃん―― と思っていた。
「とにかく最初からな?」
「うん!」
ソフィアは前世30歳近い年齢まで生きてたと言ったけどその割には幼い。
でもそれは、剣術の家庭教師からヒントを貰ったので納得はしてる。
身体が幼いと精神も幼いままなのだと教わった。
だから体を鍛えるのだとも言われた。
俺達が剣術や体術を習って鍛えるのは、体を上手に成長させる為であって腕っぷしを強くするだけが目的じゃないらしくて、上手く成長した身体にはそれに釣り合うように精神力も伸びていくのだという。
それが精神的な落ち着きに繋がり最終的には魔力の発露や安定にも繋がるらしい。
ソフィアは小柄でどちらかと言うと6歳にしては幼いから身体の方に精神が引っ張られて、見合うような振る舞いや感情の動きになってるんだろうと思う。
6歳の身体に30歳の精神力だろ? バランスが悪すぎる。
魔力がやたら多く不安定なのもそのせいかも知れない。
そんな事を頭の隅で考えながら俺は彼女に書いてあることを分かりやすく説明しながらページを捲った。
×××
「じゃあさ、この本に書いてあるのを簡単に言うと魔力切れを起こすくらい魔法をぶっ放してたら、魔力の総量が増えて魔法の威力が上がるってことよね?」
「うん、まあそうだね」
「じゃあ森でぶっ放せばいいか」
お前それ以上魔力量多くしてどうするの?
世界征服する魔王にでもなるのか?
目眩がした。
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