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28 コピーも程々にね
ベヒモスをテイムする為に渋る辺境伯から闘技場を貸し切りにさせてもらう権利をもぎ取ったソフィア。
――勿論従兄弟2人が責任持ってソフィアを守り切るという条件付きではあるが・・・
辺境伯本人は愛娘が心配で闘技場に付いて行きたがったが、捕まえた他国の冒険者と名乗る流れ者の尋問に立ち会う為泣く泣く小隊長と魔術師達に連行されて行った・・・
単純に領主より娘や婚約者の方が遥かに強いことが部下達に周知されているからだ。
そして領地を無法者から守るのも領主の仕事なので仕方ないのである。
×××
「ベヒモスをテイム出来たら30年周期の謎も解けるかも!」
執務室から廊下に出た途端に、当然のような顔で腰を抱いてエスコートするシルファだが、ソフィア自身はそれを気にも停めずに嬉しそうにベヒモスをテイム出来た後の事を想像してニヤついている。
2人に呆れた視線を送る従兄弟のアジェス。
いつものことだが・・・
「テイムが上手くできなかったらこっちが踏み潰されるんじゃねーの?」
「力技でねじ伏せるもん」
王子に寄り添われたまま、そう答えムッとした顔になる美少女の顔を覗き込むシルファ王子。
「どうやってテイムする気だ? あまり考えたくはないがひょっとして無計画なんじゃないか?」
「・・・・」
無言のままそっと顔をあらぬ方向に向けるソフィア。
「「やっぱり・・・」」
2人の従兄弟の呆れ声がハモった。
×××
「だ~か~ら~。ベヒモスの魔力総量が私より少なかったから、あの魔道具の中に転移したんだってば。だから大丈夫」
「つまり、ダンジョンに居たベヒモスは魔力量がソフィアより少ないということか?」
「うんそうだよ」
大変愛らしい仕草で首をコテンと傾げながら説明するソフィア。
「御する能力が持ち主に無いと判断すると、そもそも捕まえられない仕組みなの」
「は? そんな事を誰が判断すんだ?」
頭の後ろで腕を組むアジェスが呆れ顔を加速させた。
「あのボール型魔道具よ」
「面白い仕組みにしたんだな。そうでなくとも廃棄ダンジョンの中で危険だったのだから時間もなかったのだろう? 問答無用で閉じ込めるものを作っても良かったのに」
「・・・つい」
目を泳がすソフィアの顔をじっと見て腰を抱いたまま溜息を付く婚約者が、彼女の耳元で
『また原作に忠実に、か?』
と囁くと彼女は思わず顔を赤くして、
『ちょっとだけ、焦ってたの!』
むぅッと口を尖らせた。
×××
ソフィアは幼い頃から思考と魔法が瞬時に直結し発動する、言うならば野生の魔法使いだった。
そして未だに頭で思い浮かべただけで魔法を行使する事をやってのける。
それを周りは天才と言うが、前世の記憶がテレビ画面を見ているように脳内再生されるから出来る裏技であり、要はお手本を先んじて知っているから魔法での再構築が容易いといえるだろう。
彼女が転生者である事を知っているシルファ王子は、その秘密に気が付き無意識に転移魔法を発動出来るのはそのせいだろうということにも当然考えが至った。
要はソフィアは想像力がこの世界の者に比べて強すぎたのだ。
寝ぼけて意識せず何処かへ転移してしまうことが度々あったというソフィアの行動を脳が現実と夢とを取り違えてしまうから起きる誤作動の一種だろうと彼は当たりをつけた。
脳が夢で見たことを現実として取り違えて知らないうちに転移してしまう事を危惧したシルファ王子は、彼女に各元素の魔力の特徴と魔法の法則つまり魔法理論をガッチリこれでもかというくらい毎晩つきっきりで嫌というほど教え込む事にしたのだ。
『魔法を現実世界で行使するには、先ず魔法理論を思い浮かべてから』
と、兎に角嫌になるくらい義務付けをさせ現実と夢を脳に区別させる癖をつけさせたのである。
――下手に転移した先で何処かのロリコンに捕まったりしたら一大事だ――
ソフィアは彼にとっての大事な遊び相手なのだから危険な目に合わすわけにはいけない。
今になって考えると、他の連中にソフィアを渡したくないという一心だっただけなのだが・・・
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