見舞い

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 彼女ははっきりと岳人の姿を確認すると、大粒の涙をボロボロと流し始めた。 「杏樹・・・。大丈夫か・・・?大丈夫じゃないよな」 「うっ・・・うぅ・・・岳人さぁん・・・」  杏樹は次第にしゃくり上げ、彼に抱きつき、彼の胸の中で「怖かった、怖かった」と泣き始めた。  一方の岳人もまた彼女を「大丈夫、俺がいるよ」と言いながら強く抱きしめた。  医師いわく、この症状は根気強く向き合うしか方法が無いのだという。  さらに彼は、まだ若い杏樹に対して毎日睡眠薬を投与するということに消極的なのでとにかく自力で治すことが最も重要だとも言われた。  医師と看護師が部屋を去った後、岳人は杏樹の手を握りながら彼女に言う。 「一緒に、少しずつ治していこうな」 「私のせいで、ごめんなさい」 「何を言ってるんだ?なんで謝る?俺が側にいるって約束しただろ」  杏樹はコクコクと頷きながらもまたポロポロと泣く。 「あー、また泣いちゃう。大丈夫だよ。怖いことも無いし、杏樹は何も悪い事はしてないんだから。な?」  そして、肩を震わせる彼女をまたそっと抱きしめ、杏樹は岳人の胸に顔を埋める。
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