社内イチの地味子

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 たいてい話がヒートアップしそうになると、課長がわざとらしく咳払いをする。  彼女たちは「ヤバい、怒られるわ」と目配せをしあいながら仕事に戻る。  不意に、津田が杏樹に書類を渡しながら話し掛けてきた。 「杏樹ちゃんも橘さん格好良いって思うでしょ?」 「え、あー。言われてみればっていう感じですかね」 「えー、何それ。あの人は誰がどう見ても格好良いって思うはずだけど。まあ、杏樹ちゃん男に興味無さそうだし、そんな格好良いとか思わないのかな」  杏樹は苦笑するしか無かった。  すると、たまたま近くを通り掛かった猿田が口を開く。 「薗田さん、地味子だしイケメンとか興味ないよねー?」  そしてゲラゲラと笑いながら後輩を連れて事務所から出て行った。 「猿田さん、女の子にそんなこと言ったらいけないよねー。でも杏樹ちゃんは確かに地味なタイプではあるよね」  津田はそう言い残すと自席に戻って言った。  杏樹はその場を笑って過ごしたが、何とも言えないいたたまれない気持ちになった。
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