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「まずはど定番。体育倉庫からいこう」
体育倉庫。運動が苦手で体育が嫌いだった私はホコリとカビの臭いのイメージしかない。
「勉強ばかりしていたリコくんは知らないだろうが、ここは症例発生率がダントツに高い。ほら、今丁度、友達以上恋人未満の二人が入っていくのがみえるだろ?」
先生の指の先を見ると運動服を来た男女が体育倉庫へ入っていった。
その様子を少し離れた場所から三人で観察していた。
「なにか取りに来たのかな? 体育大会の季節だしその準備とかで」
グレンさんが言い終わる前にさらに二人ほどの運動服を来た生徒がやってておもむろに体育倉庫の鍵を閉めた。
そしてその二人はその場を去っていった。
ごく自然に、それが普通なのだと言わんばかりに。
中の二人は何をしているの!?
鍵の音はここまで聞こえてきたのだから中の二人に聞こえていないはずはない。それに閉められたときにすぐに扉でも叩けば鍵を締めに来た生徒に気づいてもらえたはずだ。それなのに。
「さ、さあ? 道具を探しに来たんじゃない? 体育大会でつかう球とか大縄とか、棒倒しの棒とか?」
などとグレンさんが適当なことをいう。
「球? 縄? 棒を、探す!? こ、校則違反です!」
「なにが!?」
先生が私の肩に手を置いていった。
「これがこの症候群の怖いところさ。常識的に考えればありえない事が起きるんだ。ちなみにこのまま放っておくとどうなると思う?」
私は真理を答えた。
「来年辺り王国の人口が一人増えてしまうんじゃないでしょうか」
「どうして!?」
驚いてばかりのグレンさんを放置したまま先生は続ける。
「王国臣民が増えるのは喜ばしいことではあるが、不純異性交遊は校則違反だったな? リコくん」
「もちろんです先生。生徒手帳にしっかりと書いてあります」
「ええ!? そんな校則あったっけ……あ、ほんとに書いてある……」
生徒手帳を見て愕然とするグレンさん。
その時、今頃になって体育倉庫の扉を叩く音が聞こえてきた。助けてーだって。お前ら本当に助かる気あるのか。
「というわけだから速やかに彼らを助けるとしよう。間違いが起きる前にね。ついでに二度とこんな事が起きないように内側から鍵を開けられるドアを一つ取り付けておこう。たったこれだけのことでこの手の事故は防げるというのにな」
「許せませんね」と私が言うと
「……誰を許さないんだろう」とグレンさんが呟いた。
先生は体育倉庫の扉を開け、すでに脱出を諦めてナニかいい雰囲気だった二人をさっさと追い出し、魔法で内から開くドアを追加してこの場の治療は完了した。
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