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「ここが保健室です! あたしは病気とかしないから一度も使ったことがないんですよね。ここにもなにか危険があるんですか?」
と案内してくれたグレンさんは新品のコインのように明るい笑顔。
保健室か……。
「なにを赤くなってるんだよリコくん。保健室は何のための場所かな? リコくん言ってみて」
「怪我の治療をしたり体調不良になった生徒を休ませたりする場所です」
「その通りだ。我が診療所と同じく治療や休養を目的とした場所だ。にもかかわらず、悲しいことにここで不純異性活動に励むものが後を絶たない」
許せませんね!
「それほんと!?」
信じられないといった顔のグレンさんを放置して先生は続ける。
「神聖な診療の場を何だと思っているんだろうね」
「まったくその通りです先生。体調が悪くて寝てる私を自分たちが盛り上がるためのスパイスに使うなんて外道のやることです!」
「リコさん……保健室になにか嫌な思い出があるの……?」
全く忌々しい思い出だ。
先生は保健室のベッドの前に立つ。
「その元凶は……このベッドを仕切るカーテンだ! 全部こいつが悪い! こんな安い風俗店みたいな仕切りがあるから青少年たちが惑ってしまうんだ。だれだ! こんなカーテンを考えたやつは!」
「センセの診療所にも同じようなのがあったような……」
グレンさんのつっこみは先生に届かない。
「だがカーテンがなくなると真の利用者も落ち着かないだろう」
「真の利用者……?」
「そこでカーテンを薄い半透明にする」
着いてこれないグレンさんを置き去りに、先生は魔力でカーテンをすりガラスのように薄っすらと透けるものに変えた。
これならベッド利用者のプライバシーは守りつつ、万が一不純な行為が行われていれば外からすぐにわかる。さすが先生。
「どうかなぁ。体調が悪い人は落ち着かないんじゃないかなぁ」
「たったこれだけで症候群の発生を防げるというのに、なぜ未だに全学校に導入しないのか謎で仕方ない。まあ、これでも行為に及ぶ輩が現れないとも限らないが、そこまで気合の入った奴らはどうやってもやるだろうから放っておくしかないな」
映像記録魔導石の導入も検討しましょう、と私が提案したけど「それはやりすぎ!」とグレンさんに止められた。
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