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「こちらは屋上でーす。うちの屋上はちょっとしたガーデンになってるんですよ! お昼ごはんを食べたり友達と喋ったりできる人気スポットで自慢の屋上です!」
と磨いたコインのように明るい笑顔のグレンさんが私たちの様子を見て顔をひきつらせる。放課後ということもあり屋上に生徒はいなかった。
「なぜお二人はそんなに険しい顔を……」
「屋上といえば昔は不良のたまり場だったが、随分様変わりしたものだね。最近はここでも不純異性交遊が行われることもあるらしい。……こんな場所で不純異性交遊……それってかなり上級者だよね?」
と先生が私の方を見上げる。「さすがに最後までやる人はいないのでは?」と返す。
「お二人はいったい何の話をしてるんです!?」
「屋上は人目につかない上に高い位置にあることで吊り橋効果も狙えてしまうことから非情に危険な場所だと言えるだろう。色んな意味で」
間違いない。でも今はもう屋上に出られない学校がほとんどらしい。
「基本的にはね。ただ許可を取れば使うことができるなんていう学校は多い。部活動の場所がないクラブや文化祭の準備で広いスペースが必要な時なんかにね。そういうときが一番危ないというのにな」
屋上で文化祭の準備とかそれだけでもうなにか始まってしまいそうだ。
「なにが始まるの!?」
「そこで、屋上はむしろ開放して、常に衛兵を巡回させる」
「そんなお城みたいに!?」
グレンさんの反応を見ているとこの診療所に来たばかりの頃の自分を見ているようだ。
「国の未来を担う若人のための投資だ。城なんか護るより学校の屋上を護る方がいいに決まってる」
「王宮より重要なの!? 屋上が!?」
私はとてもいい案だとは思うけど経費がとてもかさみそうだ。
「だったら教師が交代で番をすればいい。体育教師か武術や剣術の教師が適任だな。または衛兵志望の学生に風紀委員隊を発足させて見回りを強化させてもいいな。屋上の見張り用の休憩スペースをつくってやるといいんじゃないかな」
「そんな屋上もう来たくないなあ……」
グレンさんは机の裏で数年間を過ごしたコインのような顔になっていた。
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