学園症候群

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「次は教室だ」  廊下をズンズンと進む先生。案内役のグレンさんの足取りは重くなっていた。 「教室に危険なんてあるんですか?」 「日中は比較的安全だが、危険なのは放課後だ」  適当に教室の扉を勢いよく開け、中にいた生徒をビクつかせた先生は 「ほら、撤収撤収!」といって生徒を追い出した。 「な、なにするんですか! かわいそうですよ!」  とグレンさんが先生に詰め寄るけれど 「リコくん」 「はい。校則第3条第11項。放課後は特別な用事がない限りは速やかに下校すること。第18項。放課後に教室などの学校の設備を使用する場合は必ず責任者の許可を得ること」 「そんな校則あったの!? でもそんなのってとりあえず書いてあるだけのやつなんじゃ」 「校則は校則です。校則は守るためにあるんです」 「リ、リコさぁん……」  誰もいなくなった教室。なぜか落ち着かない気分になる。 「教師の目の届きにくい放課後の教室は、実は最も危険な場所と言える。なんせ数も多い上に他の特別教室などに比べ警備も甘い。さらに用がないやつが入ってくることがほぼないからな」 「言われてみれば、他のクラスってほとんど行ったことないなあ。なんとなく居心地が悪いんだよね、他のクラスって」  グレンさんは初めて友達の家にきたような様子で教室を見回していた。私は用があっても別のクラスになどにいったことはない。 「そこで衛兵を各教室に置く」 「さすがにそれは無理じゃないですかセンセ。この学校だけでも教室はいっぱいあるんだし……」 「そうか。一番確実な方法だったんだけど。それならいい方法がある。この術式を使うんだ」  先生は今度は魔法陣を作り出して教室の入口に設置した。 「これは施錠の魔法の一種でね、解錠には特定の呪文を唱える必要がある」 「どんな呪文ですか?」 「放課後の教室でやっていたことを400字で発表するんだ。内容に虚偽があったり、文字数が少なすぎたり、誤字脱字があるとやりなおしだ」 「そんな反省文みたいな!?」 「学生なんだからそれくらい楽勝だろ? それとも口に出せないようなことを放課後の教室でやるつもりだったのかな?」 「あたしは放課後はすぐに騎士団のバイトがあるので帰ってますから……」  目をそらすグレンさん。深く頷く私。 「素晴らしいです先生」 「だ、だれかこの二人を止めて!」
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